“次の次の世代へ”託す、お米づくりー「お米番付第11回大会」優秀賞:水口一真さん 品種:いのちの壱

“次の次の世代へ”託す、お米づくりー「お米番付第11回大会」優秀賞:水口一真さん 品種:いのちの壱

最終更新日:2025-04-30

食味分析計を一切使わずに「甘いお米」を発掘する異色の食味コンテストとして、11回目を迎えた「お米番付」。今回、入賞を果たしたのは広島県山県郡北広島町で「いのちの壱」を栽培される水口一真さんでした。おいしいお米を追究するだけでなく、地域活動への参加やメディア出演など、精力的に活動を続ける水口さん。その原動力、そして今年から始めた新たな挑戦について、お話を伺いました。

全国の“お米の猛者”と語り合える場、「お米番付」

前年「お米番付第10回大会」では西日本高速道路エンジニアリング中国株式会社として出品し、最優秀賞を獲得した水口さん。今回は前年とは異なり個人としての受賞となった。「こうして『お米番付』に帰ってこられて本当によかった」と笑顔の様子。「表彰式ももちろん緊張したし、結果ももちろん気になった。でもそれ以上に、“お米の猛者”である全国の生産者たちと直接話せることがとても幸せでした」と振り返る。

昨年から表彰式の後に開かれるようになった交流会では、全国の生産者や業界関係者と情報交換が行われ、終わった後は多くの参加者が「来てよかった」と話す。水口さんも昨年の交流会では、滋賀県竜王町の若井康徳さん(「お米番付」受賞歴のある生産者)から沢山のアドバイスをもらったそう。全国の生産者さんたちと話すことができる、またとない機会。その時「来年も絶対この場にいたい」と強く思ったそうだ。全国の“お米の猛者”たちとお酒を酌み交わすあの時間が、ご自身のお米づくりの方向性をさらに強固なものにしてくれたと語る。

子どものその先の未来、“次の次の世代”へと託す

水口さんがお米づくりを続ける理由。それはご自身のお子さん、そして“次の次の世代”にも農業の選択肢を残していくためなのだそう。「息子は今、小学生なんですが『お父さんの後を継いでお米づくりをしたい』って言ってくれるんです。でも、地域が衰退して田んぼが荒れていたら、志望する前に選択肢すら与えてやれない。バトンを渡すために環境を整えておくことが必要なんです」と話す。

中山間地域である北広島町の大朝地区では年々、少子高齢化と過疎化問題が深刻化している。水口さんはこのままでは町そのものが立ち行かなくなるという危機感を感じているそうだ。「“ここでお米を作れば儲かる”という仕組みをつくる必要がある」と語る水口さん。その取り組みの一環として、今回の「お米番付」のように食味コンテストでの受賞やメディア出演、生産組合としての活動を通じて、地域を発信し続けている。

「もう、“次の世代”にすら間に合わないかもしれない。だからこそ、“次の次の世代”を見据えて動いているんです。自分たちの上の世代が、もっと早く動いていたら間に合ったかもしれない、と思うこともある。だから僕が今、未来に向けて動かないと、子どもたちの世代には何も残せなくなるかもしれない」と話す。

おいしいお米を作ることは、地域全体の価値を上げ、次世代に可能性を引き継ぐための未来への投資につながる。「“次の次の世代”が、この町で安心してお米づくりをできるようにしたい」という想いが、水口さんの原動力となっている。

来年は「夢ごこち」に挑戦

水口さんが目指すおいしいお米づくりとはどんなものか、と伺うと「暑さに左右されないおいしいお米づくり。やっぱり誰が食べてもおいしいって言ってもらえることです。これって絶対にゴールがないんですけどね(笑)」と答える。

そんな水口さんが今年、新たに挑戦するのが「夢ごこち」という品種。「八代目儀兵衛さんとお話ししている中で、夢ごこちにチャレンジしてみてくれないか、ってご提案いただいたんです。あの言葉が本当に嬉しかった。光栄という言葉だけでは足りないくらいでした」と喜ぶ一方でどこか緊張されている様子。

「夢ごこち」は一般的に味わいのバランスに優れておりおいしいと言われている一方で、温暖な気候では栽培が難しいとされる繊細な品種でもある。「広島は“ぬくい(暖かい)”というイメージがあるけど、僕の地域は標高が高くて雪も降る。3月になっても雪が積もってるくらいだから、チャレンジしてみたい」と生き生きと話される。北広島町・大朝地区は、広島の中でも寒冷地に分類される場所で、寒暖差も大きく、おいしいお米が育ちやすい条件がそろっている。今回受賞した「いのちの壱」を水口さんが栽培し始めたのも、品種自体の栽培が始まった岐阜県飛騨地域の気候ととても似ているからなのだそう。

栽培が難しいと思われている「夢ごこち」の栽培に挑戦するにあたり、水口さんは「ここから僕の真価が問われると思っています。おいしく栽培できるようになるまで何年かかるか分かりませんが、チャレンジできること自体にワクワクしますね。今年が日本一の夢ごこちをつくれるような農家になるための第一歩です」と目を輝かせて話された。

異常気象の中でも生産者が信頼する、儀兵衛の“精米と炊飯の力”

昨年の西日本の夏は、例年にも増して暑さに見舞われ、お米づくりには難しい年となった。「昼と夜の気温差がほとんどなくて」と水口さんは振り返る。しかしそんな中でも高温に負けない丈夫な根を持つ稲に育てるために、継続して土づくりに力を入れてきた。おかげで昨年は気の抜けない一年となったが、こうした日々の積み重ねが実を結び、西日本では珍しい「いのちの壱」を今年も収穫することができた。

「今回、八代目儀兵衛さんで自分のお米がどう提供されるのか、とても楽しみなんです」と話す水口さん。「八代目儀兵衛さんはそのお米に合った提供をしてくれるから。うちで精米して炊いたものと、八代目儀兵衛さんで食べるのとでは、まるで違うお米みたいになるんです。過去にお店へ伺った時も、香り、甘み、粒立ち、全部違った」と、以前に八代目儀兵衛の米料亭でご自身のお米が提供された時の味を振り返る。

水口さんが八代目儀兵衛に納めた玄米は、八代目儀兵衛の職人たちによって丁寧に精米され、そのお米が持つ魅力を最大限に引き出される。そして米料亭では、そのお米の良さを知り尽くしたプロの手によって、洗米、吸水、火加減など細部にまでこだわって炊飯し、最高の状態でお客さまのもとへ提供される。

「収穫したお米を託して、“あの人たちなら絶対においしくしてくれる”と思える安心感がある。だから、これからも八代目儀兵衛さんに出していきたい。うちのお米の魅力を最大限に引き出してくれるお米屋さんだと思ってます」と言葉を残した。

2025年5月10日(土)から11日(日)までの2日間、京都祇園と東京銀座の「米料亭 八代目儀兵衛」では、水口さんが育てた「いのちの壱」が提供されます。“次の次の世代”へと地域のお米づくりを託すために、冷涼な広島の地で水口さんが丁寧に育て上げた一粒一粒。水口さんの想いと八代目儀兵衛の職人の技が掛け合わさった香りと甘さを、ぜひ米料亭で味わってみてください。

【執筆者プロフィール】

荻野 奈々果
お米ライター/栄養士
日本米穀商連合会認定ごはんマイスター

広島女学院大学栄養学科を卒業後、新卒で米卸業者に就職。その後上京し、食品飲食業界にて栄養士・マーケターとしてお米の魅力を発信する。米卸業者での社長秘書、広報、営業としてのキャリアスキルを活かし、お米を主軸に置いた日本の伝統的な食文化を見直し、そこから次世代を見据えたお米の価値を創造していくなど、その活動の幅を広げている。日本米穀商連合会の「ぽかぽかお米びより」にてお米生活コラム「NaNaKaの穂のぼのMyライフ」連載中。

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