受け継ぐ“篤農家”の精神。終わりのない積み重ねー「お米番付第11回大会」入賞:鈴木雄樹さん 品種:「ゆうだい21」

受け継ぐ“篤農家”の精神。終わりのない積み重ねー「お米番付第11回大会」入賞:鈴木雄樹さん 品種:「ゆうだい21」

最終更新日:2025-07-22

成分分析計を使わず、審査員の五感で選び抜かれる「お米番付第11回大会」で入賞を果たしたのは、福島県須賀川市で「ゆうだい21」を育てる鈴木雄樹さんでした。初出品での快挙の裏を伺っていくと、そこには職人気質な鈴木さんの性格が見えてきました。祖父から受け継いだ基本をまじめに守りながら、そこに日々、ご自身のエッセンスを入れていく積み重ねによって生まれる味わい。“篤農家”鈴木さんの終わりのないおいしいお米づくりに迫ります。

■“篤農家”を受け継ぎ、初エントリー受賞

「まさか、初出品でここまでいけるとは思わなかったです。驚きと嬉しい気持ちが半々なのが今の正直な気持ちです」

そう語る鈴木さんは、今回が「お米番付」初エントリーだった。入賞したことは地元紙にも掲載され、親戚からの連絡や注文の問い合わせなど連絡がたくさん舞い込んだそうだ。

お米づくりは鈴木さんのご家庭で代々続く家業。現在ある土地でお米づくりを始めてから4代目になる。就農したきっかけは祖父母の「いい農家になってほしい」という一言だったという。「昔でいう“篤農家(とくのうか)”になってほしいと言われて。元々、機械いじりやトラクターの運転が好きだったのもあって、自然と家業に戻ってきました」

■“通風採光”。太陽と風が作る、甘みと粘り

鈴木さんはお米づくりをする際に、虫や病気に負けないように稲そのものを強く育てることを意識する。これは祖父から教わった、稲の生育環境の基本となる風通しと日当たりを大切にする“通風採光(つうふうさいこう)”の考え方が基盤となっている。

風通しが良い“通風”、そして稲がたくさんの太陽を浴びることができる“採光”、この2つが揃った田んぼは、病気や虫にも強く、光合成も活発になるのだそう。「水や肥料の吸収も良くなり、結果的に米粒の甘みや粘りが生まれるんです」と教えてくれた。

■祖父の教えをもとに、“地力”を活かす土づくり。

“通風採光”のほかに、鈴木さんは土づくりの大切さもお米づくりの基本として掲げている。「祖父から“土が良くなるには、栽培の最初が肝心”と教わりました。元々ある土の力である“地力”を大切にして、それを肥料がサポートする。いい土を作るには一度にたくさん肥料を入れるのではなく、必要なものを何回かに分けて少しずつ足していく。丁寧な土づくりを今でも大切にしています」と話す。

土へのこだわりは資材選びにも表れている。鈴木さんは、ヨウリン(リンを多く含む肥料)やケイカル(田んぼの土を元気にするカルシウムやケイ素の肥料)、さらに菜種カス、そしてご自身が手作りした籾殻のくん炭など、土を健康にする資材を厳選して使う。さらに、田んぼによって粘土質や砂状土など性質が異なるため、その場所ごとの保水力・肥料の持ちを見極めて、水や肥料の量も細かく調整しているのだそう。

■基本に少しのエッセンス。積み重ねで生まれる味わい

このように鈴木さんは、家業として代々続くお米づくりの基本に工夫を加えて、毎年バージョンアップをしてきた。

たとえば品種の特長も分析して、田植えの時期や水管理の方法も細かく調整しているという。「ゆうだい21」の場合は、他の品種よりも少し早い5月中旬から田植えを始め、出穂はお盆ごろになるようにしている。他の生産者と時期をずらすことで、地域が持つ水資源を利用する時期を分散できて、水不足の懸念も避けることができるなど、持続可能なお米づくりにもつながるのだそう。

「登熟期を気温の高い時期からずらすことで、甘みや粘りが際立つお米になりますし、近年はこのスケジュールでお米づくりを行っていますね。このように基本を大切にしながらそこにちょっとしたエッセンスを入れていく。うまくいかなければまたやり直す。毎年トライアンドエラーの繰り返しですが、おいしいお米はその積み重ねによって生まれるものだと思っています」と話す。

■ 個々の得意分野を活かし、みんなで学び合う

このように日々、お米づくりとまじめに向き合う鈴木さんは、学びを続けることも大切にしている。ご自身が所属する大竹商店グループの勉強会のほか、これまでに農薬・肥料メーカーとの交流、そして県外の新品種選定などにも積極的に参加してきた。

「情報交換をしたり、たまには飲みに行ったりして、みんなで高め合う時間はいいですよね。時には県外に出て、他の生産者とつながることもあります。自分ひとりの発想だけでは限界があるから、他の生産者から刺激を受けることも大切だと思っています」と他者との関わりも大切にする。たとえば機械やトラクターの運転が好きな鈴木さんに、他の生産者から質問が来た際はそれについて答えるなど、集まれば互いの得意分野を活かした学び合いが生まれるのだそう。

近年は生産者の後継者不足の問題から、若手生産者が耕す面積が増加し、大規模農業経営が加速している。鈴木さんご自身も、就農当初は10ヘクタールからのスタートだったが、現在は22ヘクタールと面積が倍以上になっているそうだ。「周囲から頼まれて借り入れるうちに、どんどん面積が増えていきました。現役世代の農家が減る中で、引き継ぐ役目も大きくなっています」と話す。

田んぼの大規模化が進むにつれ、より一層、高性能な農業機械の重要性が増していく。しかし昨今は、その需要に反して農業機械の価格が高騰傾向にある。この状況について鈴木さんに尋ねると、「自分は壊れる前に機械を買い替えるようにしています。サイクルを早めて下取り価格を維持し、次の投資につなげる。壊してから直すのではなく、なるべく新しいものを使う方が効率も精度も良いですから」と教えてくれた。機械をご自分で整備したり、業者さんと一緒に修理もするそうだ。

■子供からも愛される、鈴木さんの推し「ゆうだい21」

こうした鈴木さんの好きなものに熱中して極めようとする姿勢は、お米づくりにも現れている。今回受賞した「ゆうだい21」は、鈴木さんが8年前に食べて惚れ込んだお米だ。「一般的においしいと言われる『コシヒカリ』よりも、『ゆうだい21』は甘みと粘りのバランスが自分好みでした。食べてすぐに“これは自分でも作りたい!”と思ったんですよね」と語る。

現在は「コシヒカリ」「ひとめぼれ」「ミルキークイーン」「福笑い」なども手掛けているが、その中でも「ゆうだい21」は鈴木さんが特に自信を持って提供する推し品種。「どの品種も安心安全でおいしいお米を目指しているけど、『ゆうだい21』は特におすすめです。味に敏感な小さなお子さんが『他のお米は食べられない』と言っておかわりしてくれた時は本当に嬉しかった。子供の率直な声ほど、生産者にとって力になるものはありません」と顔をほころばせる。

■“安心・安全、そしておいしいお米”を目指して

子どもからの声も大切にする鈴木さんが目指すのは、“安心・安全、そしておいしいお米”。そのため、農薬や化学肥料を使わないようにしている。「使うと収穫量は確かに増えるけど、その分味や安全性が損なわれることもあると感じていて。また、私自身がアレルギー持ちなのもあって、殺虫剤や殺菌剤を使うと手がかぶれてしまうんですよね。自分の手がかぶれる薬剤を稲に撒くなんて、人の体にどう影響するかわからないなと思って」と話す。今はカメムシなどを防除するための殺虫剤すらも、一切使っていないそうだ。

農薬や化学肥料を使わない代わりに、ミネラル分や自作の光合成細菌を投入しながら、稲の健康に細心の注意をはらう。「自然と共存し、虫も小動物も共に生きる環境を守るのが自分のスタイルです。ここの田んぼにはカエルや鳥、時にはクマやシカ、イノシシもやってくる。農薬を使わないからこそ実現できる環境が、自分の田んぼの周りにはあります」とにこやかに話す。

■ 終わりのない積み重ね。それを続ける自分が好き。

祖父母の想いを受け継ぎ、鈴木さんはこれまで“篤農家”という誇りを胸にお米づくりを行ってきた。お米づくりはご自身にとってライフワークだそうだ。「お米づくりをしている自分が好きだから続けてこられた。収穫の喜びや、作業後に飲むビールのうまさ、台風を乗り越えた稲を見た時の達成感。その一つ一つが、この仕事のやりがいです」と話す鈴木さんからは、職人気質な性格であることが伝わってくる。

今後の意気込みを伺うと、「お米番付第11回大会」で入賞した今回の栽培方法をさらにバージョンアップさせて、今年は『いのちの壱』にも挑戦したいとのこと。「最終的には『お米番付』で最優秀賞、日本一を目指したいです。でも、一番になったからといって終わりじゃない。最終的な目標は“鈴木さんのお米じゃなきゃ”と、みんなからおいしいと言われるお米をつくること。おいしいお米づくりに向かっていく日々の積み重ねに終わりはないと思っています。これからも続けていくつもりです」とこれからの意気込みを語った。

8月9日(土)から10日(日)までの2日間、京都祇園と東京銀座の「米料亭 八代目儀兵衛」にて、鈴木雄樹さんが育てた「ゆうだい21」が提供されます。“安心・安全、そしておいしいお米”を掲げ、基本を大切にしながらこれまでバージョンアップを続けてきた鈴木さんのお米。子どもが思わずおかわりするほどのそのおいしさを、八代目儀兵衛独自の精米と炊飯技術で最大限に引き出します。「まずは白米で、和食と合わせて“もちもち”を感じてほしい」と語る鈴木さん。丹精込めて育てた一粒一粒の旨みを、ぜひこの機会に米料亭でご堪能ください。

【執筆者プロフィール】

荻野 奈々果
お米ライター/栄養士
日本米穀商連合会認定ごはんマイスター

広島女学院大学栄養学科を卒業後、新卒で米卸業者に就職。その後上京し、食品飲食業界にて栄養士・マーケターとしてお米の魅力を発信する。米卸業者での社長秘書、広報、営業としてのキャリアスキルを活かし、お米を主軸に置いた日本の伝統的な食文化を見直し、そこから次世代を見据えたお米の価値を創造していくなど、その活動の幅を広げている。日本米穀商連合会の「ぽかぽかお米びより」にてお米生活コラム「NaNaKaの穂のぼのMyライフ」連載中。

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