史上最多受賞者の挑戦、おいしいお米づくりの輪を広げる「お米番付」第12回大会入賞:宮澤和芳さん 品種:「夢ごこち」

史上最多受賞者の挑戦、おいしいお米づくりの輪を広げる「お米番付」第12回大会入賞:宮澤和芳さん 品種:「夢ごこち」

最終更新日:2026-05-29

成分分析計を使わず、審査員の五感で選び抜かれる「お米番付第12回大会」。今回、入賞をしたのは、長野県安曇野市の宮澤和芳さんが育てた「夢ごこち」だった。これまで本大会で合計6回受賞し、史上最多受賞者となった宮澤さん。近年に至っては4年連続受賞するなど、毎年ブレないおいしさを届ける生産者として有名だ。そんな宮澤さんは最近、AIを活用したデータ分析を行い、生産者仲間と情報交換することで、おいしいお米の輪を広げているそうだ。今回は、何度受賞しても挑戦をやめない宮澤さんの目標を伺ってきた。

■ 史上最多受賞者、試食すらしてもらえなかった日々

「お米番付」の歴史の中で、最も多く受賞してきた生産者となった宮澤さん。「毎年こうして評価していただけることは、本当にありがたいことです。でも、入賞で満足していてはいけない。もっと上を目指さなきゃいけない、と思っています」と宮澤さんの第一声は、満足よりも次への意気込みだった。「お米番付」で何度受賞しても、エントリーし続けてきた理由は、お米を手に取ってもらうきっかけを作るため。「農家って売るのが下手くそなんですよね。でも、食べてもらえればおいしさは伝わる。そのきっかけを作るために、これからも出し続けたいんです」と話す。

宮澤さんの田んぼがあるのは、北アルプスの清らかな水がたっぷりと流れる、長野県安曇野市。最初に「お米番付」にエントリーし始めた頃は、おいしいお米の産地としての認知はほとんどなかった。宮澤ファームの名前も知られておらず、首都圏に営業に行っても、試食すらしてもらえなかったこともあったそうだ。

しかし、「お米番付」での受賞を重ねるにつれ、状況は変わってきた。受賞歴が増える度、安曇野市の名前が県外の消費者の目に触れ、おいしいお米の産地としてのイメージが定着していった。宮澤ファームの直接販売の注文を見ると、かつては試食すらしてくれなかった首都圏からの購入が明らかに増えているそうだ。「賞をいただいていますよと伝えると、手に取るきっかけになる」と宮澤さんは話す。

■ 想いが詰まった「夢ごこち」

今回受賞した「夢ごこち」は、宮澤さんにとって特別な品種だ。もともとは先代であるお父さんが栽培していたが、病気が出やすく収量も上がらなかった。一度、宮澤さんの「何でつくるのか」という一言で栽培をやめていたそうだ。

その後「コシヒカリ」よりももっと粘りのある、おいしいお米をつくりたいと品種を探していた時に「そういえば、先代がつくる『夢ごこち』は味がおいしかったなぁ」と思い出す。そこから「夢ごこち」の栽培を再開し、収穫量よりもおいしさを第一に掲げて栽培。最初は思い描いたおいしさに仕上がらなかったが、悔しさをバネに挑戦を続け、今では宮澤ファームを代表するお米となった。パッケージのロゴにも“みやざわ”の4文字で”夢”を表すデザインを採用している。

宮澤さんの「夢ごこち」は炊きたてはもちろんおいしいが、炊いて時間が経ってしまったり、冷凍してレンジ加熱しても変わらずおいしい。共働きなどで朝昼晩とご飯を炊かない家庭も多い現代において、冷めてもおいしいごはんは大きな強みだ。今では注文に販売が追いつかないほど人気になった。

■ 季節過ぎ去る、燃え尽きた一年

「2025年を振り返ると、今までないぐらいにあっという間に終わった年でした」と宮澤さんは苦笑する。猛暑への対応、広い面積を耕しながら、殺到する注文に追われるように行う出荷作業。やらなければいけないことが次から次へと押し寄せ、一呼吸する間もなく季節が過ぎていった。

特に田んぼは就農当時よりも広くなり、それに伴い業務もどんどん増えている。高齢化で急に体調を崩し「田んぼを借りてくれないか」という依頼が増えているのだ。宮澤ファームでは地域の後継者を育てる一環として、昨年からは将来独立を目指す近隣の生産者の息子さんを新たに従業員として迎え入れた。

「秋の繁忙期が終わると燃え尽き症候群のようになってしまう」と言いつつも、冬の間は部屋の中でプランターに植えた稲で試験栽培を続けている。そんな忙しい宮澤さんを支えているのは、家族の存在。日頃の恩返しの気持ちも込めて、繁忙期以外はなるべく家族との時間を大切にするよう心がけているそうだ。

■ 次世代の担い手を育てる、種まき

お子さんに農業を継いでほしいかと尋ねると、「私も小さい頃は、農業なんか絶対やるもんかと思っていました」と笑う。宮澤さんは学生時代は東京で過ごしていたが、そこで改めて安曇野市の良さを実感して就農した。自分と同じように、子供たちもいつか安曇野市でお米づくりがしたいと思う時が来るかもしれない。その時に「機械も壊れて施設も老朽化してるからできないよ」と諦めなくてはいけない状況にするのではなく「よし、やるならやるか」と言えるように環境を整えておきたいそうだ。

次世代のお米づくりの担い手を育てるために、子どもたちへ農業の魅力を伝えることも大切にしている。地域の保育園で開催される「園庭マルシェ」に宮澤ファームの元保育士の従業員が参加し、子どもたちや保護者にお米や野菜を届ける取り組みを行っているそうだ。

子どもたちに興味を持ってもらえれば、保護者である大人たちも農業を温かい目で見てくれるようになる。住宅街で農業をしていると、朝から音を出さざるを得なかったり、人によっては臭いが気になってしまうなど、生産者としてやりづらさを感じる部分もあるそうだ。だからこそ子どもたちに届けて農業に関心を持ってもらうことは、次世代の担い手を育てる、大切な種まきにつながる。

■ AIと壁打ちし、答えを編み出す

未来を見据えながら、新しい技術の導入にも積極的な宮澤さん。最近は、生成AIをお米づくりに活用しているそうだ。「自分の頭の中で考えていることをAIに投げかけて、科学的な根拠からどうなのかを確認するんです」と宮澤さん。「こういうお米をつくりたいけれど、どういうアプローチをしたらいいか」といった相談もするという。

ただし、AIの回答を鵜呑みにはしない。複数のAIに同じ質問を投げて回答が一致するか確認し、最終的な判断は自分で下す。「AIで効率化は進むけれど、本当においしい仕上がりになるかの最終判断は人なんですよね。感覚の農業を次世代につなげるには、数字と経験値、両方のバランスが大切だと思っています」と語る。

AIとの壁打ちを繰り返して見つけた案を、資材メーカーの担当者や他の生産者にも相談することもある。「この資材を撒けばお米がおいしくなる」という感覚的な話に、AIが示す科学的根拠を添えて説明する。すると「そういう根拠だからおいしくなるんだ、じゃあ間違いなかったね」と、皆が納得できるきっかけにもなるそうだ。

■個から広がる、お米づくりの輪

こうした情報共有ができるようになったのは、ここ数年のことだという。「私が就農した頃は、産地としてお米を良くしようというよりも、個人で自分の家のお米がもっと売れたらいいな、という考えの人が多かった。『うちはこういう肥料を使ってて、こういう作り方をしてるけど、どういう作り方してるんですか?』なんて話、当時した覚えはない。自分たちの技術は隠して出さない、そんな雰囲気でしたね」と宮澤さんは振り返る。生産者同士が栽培方法を共有することは少なく、個人プレーが当たり前の時代が長く続いていた。

しかし今、お米づくりの作業量の増加や後継者不足という課題を前に、「個の力だけでは産地を守れない」という意識が広がってきている。こうした背景もあり、今年の「お米番付第12回大会」でも、初の団体部門が設けられた。お互いが持つお米づくりを共有し合うことで、おいしいお米づくりの輪が広がっていく流れがお米業界全体で生まれている。

これからは日本のお米づくりや、自分の耕す産地をどう守っていくか考えていかなければならない時代。個の力だけでは及ばない部分もでてきた。お米づくりの技術進歩も、日進月歩の勢いだ。それに伴い、今まで以上に生産者同士が交流する機会も増え、自然と情報交換できるようになってきた。

「お米番付12回大会」表彰式後、受賞した生産者の他に、おいしいお米づくりを志す生産者たちも交えた表彰式・交流会が行われた。宮澤さんは安曇野市に隣接する松本市の生産者と「来年は安曇野・松本でトップを取りたい。全部で頂点を目指すぐらいの気持ちでやっていこう」と他の生産者の前で宣言したそうだ。「周りからは笑われましたけどね、口だけで終わらないようにしたい。来年の表彰式で、『安曇野・松本、今年どうしちゃったの?めちゃくちゃ評価高いんだけど』って、周りをざわつかせたいんです」と笑う。仲間とともに産地を盛り上げる宮澤さんの挑戦が、これからの日本のおいしいお米づくりの輪を広げていく。

6月6日(土)から6月7日(日)まで、旗艦店「炊き立て土鍋ごはん OMOYA 八代目儀兵衛」、京都祇園と東京銀座の「米料亭 八代目儀兵衛」にて、「お米番付」史上最多受賞者である宮澤和芳さんの「夢ごこち」が提供される。「一年かけて、暑い中で苦労してつくったお米です。普段自宅で食べるよりも、プロの方々がお米の最大限のうまさを引き出してくれる。ぜひお店で食べていただきたいですね」と宮澤さん。冷めてもしっとり、噛むほどに甘みが広がる安曇野市の「夢ごこち」が体験できる特別な日となるため、ぜひお店へ足を運んでいただきたい。

【執筆者プロフィール】

荻野 奈々果
お米ライター/栄養士
日本米穀商連合会認定ごはんマイスター

広島女学院大学栄養学科を卒業後、新卒で米卸業者に就職。その後上京し、食品飲食業界にて栄養士・マーケターとしてお米の魅力を発信する。米卸業者での社長秘書、広報、営業としてのキャリアスキルを活かし、お米を主軸に置いた日本の伝統的な食文化を見直し、そこから次世代を見据えたお米の価値を創造していくなど、その活動の幅を広げている。日本米穀商連合会の「ぽかぽかお米びより」にてお米生活コラム「NaNaKaの穂のぼのMyライフ」連載中。

セブン-イレブンのおにぎり ご飯監修記念
セブン-イレブンのおにぎり ご飯監修記念
高品質で美味しい業務用米・お米の卸・仕入れの通販
高品質で美味しい業務用米・お米の卸・仕入れの通販
内祝いやお祝いに。京都のお米ギフト通販。
内祝いやお祝いに。京都のお米ギフト通販。
ミシュラン店御用達の高級米。ご自宅用の美味しいお米通販。
ミシュラン店御用達の高級米。ご自宅用の美味しいお米通販。