北の小さな町から届く、人の五感に響くおいしさ「お米番付 第12回大会」優秀賞:曽根一貴さん 品種:ななつぼし

北の小さな町から届く、人の五感に響くおいしさ「お米番付 第12回大会」優秀賞:曽根一貴さん 品種:ななつぼし

最終更新日:2026-04-20

成分分析計を使わず、審査員の五感で選び抜かれる「お米番付第12回大会」。今回の優秀賞に輝いたのは、北海道で3番目に小さな町、北海道雨竜郡妹背牛町(うりゅうぐん もせうしちょう)の曽根一貴さんが湛水直播栽培でつくった「ななつぼし」だった。以前から曽根さんのお米を卸しているお米屋さんは「食味スコアにかけても平均よりはずっといいんだけど、そんなすごい高得点っていうわけじゃない。でもなぜか食うとうまいんだわ」と話していたそうだ。曽根さんのお米のおいしさは、スコアでは測ることができない部分にある。その秘密を探っていくと、常識にとらわれず、人一倍稲の成長を見守り、環境に合った育て方にこだわる曽根さんならではのお米づくりが見えてきた。

北の小さな町の、食べるとうまいお米

米どころで知られる北海道のお米だが、曽根さんによると、成分分析計では評価されにくい傾向があるそうだ。田植えではなく水を入れた田んぼに直接種を播く、湛水直播栽培のお米も、成分分析計にかけると高い数値が出にくい。これはスコアの基準とお米の相性によるもので、高い得点を出すのが難しいのだという。

北海道産の湛水直播栽培で育った曽根さんのお米。本当はおいしいのに、と思っていた矢先に「お米番付」を見つけた。最初から最後まで人が食べて評価すると聞いて、「これならまともに戦える」と思ったそうだ。

曽根さんの亡き祖父は生前「妹背牛の米が一番うまいんだ」と言い続けた。曽根さんはこの祖父の言葉が忘れられなかったそうだ。「じいさんの言葉を証明してやるか」と思って「お米番付」にエントリーし、見事に受賞。帰宅して真っ先に仏壇に向かい「ほらな、あんたの言うことは間違っていなかったわ」と手を合わせたそうだ。その後、妹背牛町の町長に報告すると、曽根さん以上に喜んでくれたという。北の小さな町から生まれた本当においしいお米が、全国に認められた。

常識にとらわれず、実際に試す

曽根さんのおいしいお米づくりの秘訣は、常識にとらわれないこと。良しとされていることでも、実際に試して自分の目で確かめるようにしている。

たとえば、掛け流し。暑い夏に稲が高温障害にならないよう、田んぼに冷たい水を流し続ける育て方で、これを取り入れる生産者は多い。曽根さんも7年前に試してみたが、冷たい水が行き渡るのは水が入った周辺のみだったそうだ。曽根さんの持つ田んぼの1枚あたりの面積は約2.5ヘクタール。これだけ広いと、あまり意味をなさない。さらに、春に撒いた除草剤が、水と一緒に流れてしまって効きにくくなる。効果がないどころか、デメリットの方が多いと判断し、掛け流しはやめた。

春の田起こしも、他の生産者と違ったやり方をしている。「浅起こしはお米が獲れない」と古くから言われてきたが、本当かどうか試すため、一度浅く起こしてみたそうだ。すると稲は根元から元気に成長し、収量も減らなかった。むしろトラクターの燃料が節約できるメリットもあった。ただし、連続で浅く起こすと良くないことも分かったため、現在は3年に1度は深く起こすようにしているそう。

「楽をするために全力を尽くしているんです」と曽根さん自身は謙遜するが、おいしさと収量を追究しながら、お米の価格高騰の原因の一つでもある、経費高騰の削減を意識してのことだ。

のびのびと子育てをするように

妹背牛町は、お米づくりに適した自然に恵まれている。盆地特有の寒暖差がある気候ながら、夏でも最高気温は33度ほど。粘土質の土壌は水分保持能力が高く、肥料持ちもいい。曽根さんはこの土地の特性を活かし、肥料を最低限に抑えている。「肥料をやったらやった分だけ収量は増える。でも、おいしさは落ちてしまうんですよね。無理に成長させないようにしています」と、稲をのびのびと育てることを大切にする。

稲はもともと自然のものなので、決して手をかけすぎはしない。一方で、その成長を人一倍見るようにしている曽根さん。朝晩の1日2回、一般的な生産者の倍くらいの時間をかけて、53ヘクタールある田んぼを見て回るのが、日々のルーティン。水を抜きに行ったり止めに行ったりするのはもちろん、稲の生え方を確かめたり、厄介な草が生えていないか目を凝らしたり、必要に応じてドローンを飛ばして上から覗いてみたりもする。

「子育てに似ているんです。“うちはうち、よそはよそ”と昔から言いますが、うちの環境に合った育て方をしています」と目を細めながら話す曽根さんは、まるで子どもの様子を見ながら、その子に合った育て方を探していく親のよう。子どもを取り巻く環境は気候のように年々変化するし、隣の家庭と我が家の当たり前が違うように、田んぼによって土壌や水回りも違う。そのため、従来から言い伝えられてきた様々なやり方は「あくまで参考程度」として受け止めながら、自分の田んぼの状態を見て、そのタイミングで必要なことをすることを心掛けている。

一つ上の味の「ななつぼし」を

実際に試して取り入れたこともある。それは今回受賞した「ななつぼし」でも採用した、湛水直播栽培だ。従来のお米づくりでは、苗を育ててから田んぼに植える、移植栽培が一般的だった。しかし近年、湛水直播栽培を取り入れる生産者が増えている。曽根さんも実際に試して収穫し、炊いて食べ比べると、湛水直播栽培の方がおいしかったそうだ。曽根さんがおいしいと分析する理由は2つある。

1つ目は、ちょうど良く熟した時に収穫できること。湛水直播栽培は移植栽培より成長が遅い。曽根さんの考える、おいしい「ななつぼし」は、しっかり熟した粒の中に、程よく活き青の粒が残った状態。湛水直播栽培だと、このバランスがベストになってくれやすいそうだ。

2つ目の理由は親穂から収穫できるお米の割合が増えることだ。稲は成長すると、親となる茎から枝分かれして茎を増やしていく、分げつを起こす。移植栽培では分げつが多くなり、親穂からのお米と子穂からのお米が混在する。一方、湛水直播栽培では分げつが抑えられ、親穂から実るお米の割合が高くなる。曽根さんは「親穂から取るお米が一番おいしい。同じ『ななつぼし』でも、一つ上の味になるんです」と教えてくれた。

食卓の真ん中にずっといてほしいお米

北の大地、妹背牛町で、子育てをするようにのびのびと育ったお米。ぷっくりした粒感で、なめらかな舌ざわり。ミルキーな甘さがありながらも主張しすぎずさわやかな余韻のため、食卓の真ん中にずっといてほしくなるのがこの「ななつぼし」の特長だ。「何と食べても、おかずを邪魔しない。ちゃんと他の人と仲良くおててをつないでくれる。そういう米なんです」と曽根さんは顔を綻ばせる。

曽根さんの目標は、ブランドや産地という肩書きと、販売価格を天秤にかけて選ばれるお米ではなく、「曽根さんのお米だから」という理由で選んでもらえるお米をつくること。「値段の勝負では輸入品に逆立ちしても勝てません。その中で僕たち日本の米農家ができることは、値段以上のものを届けること。一般的な価格帯でありながら1ランク2ランク上の味を目指しています」と力を込めて語る。

「お米番付」では最優秀賞を一度取ることよりも、最終審査に何度も残って殿堂入りしたいそうだ。「常に愛されるお米って、常に人々の心の中にあるお米だと思うんです。白いたい焼きよりも普通のたい焼き、タピオカドリンクよりも煎茶、そういう方が僕はいいな」と語る曽根さん。華のある流行りものの食べ物は最初はもてはやされるが、最後には皆、定番に帰ってくる。常に愛されるお米を収穫するため、これからも曽根さんならではのお米づくりを進めていく。

2026年5月9日(土)から5月10日(日)の2日間、旗艦店「炊き立て土鍋ごはん OMOYA 八代目儀兵衛」、京都祇園と東京銀座の「米料亭 八代目儀兵衛」にて、曽根一貴さんの「ななつぼし」が提供される。「北の大地、妹背牛町の味を存分にご堪能ください」と話す曽根さんは、まるで我が子をお嫁に出す親のように見えた。北海道で3番目に小さな町から届く、のびのび育ったおいしいお米。きっと、どんなおかずとも仲良く手を繋いでくれるので、ぜひお気に入りの組み合わせを見つけてほしい。

【執筆者プロフィール】

荻野 奈々果
お米ライター/栄養士
日本米穀商連合会認定ごはんマイスター

広島女学院大学栄養学科を卒業後、新卒で米卸業者に就職。その後上京し、食品飲食業界にて栄養士・マーケターとしてお米の魅力を発信する。米卸業者での社長秘書、広報、営業としてのキャリアスキルを活かし、お米を主軸に置いた日本の伝統的な食文化を見直し、そこから次世代を見据えたお米の価値を創造していくなど、その活動の幅を広げている。日本米穀商連合会の「ぽかぽかお米びより」にてお米生活コラム「NaNaKaの穂のぼのMyライフ」連載中。

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