最終更新日:2023-06-06
手土産を持って友だちの家やお付き合いしている相手の実家、大事な取引先を伺った際、 いつ渡すのが正解なのでしょうか?玄関やエントランスで渡すのか、それともリビングや 応接室に招かれてから渡すのか、判断に迷うところでしょう。せっかく手土産を渡すのなら、失礼な振る舞いは避け、喜んでもらいたいものです。
そこで今回は、手土産にまつわるマナーを解説。シチュエーションに応じた手土産の渡し方や選び方についてマナー講師がお伝えします。
手土産はいつ渡す?
手土産の品物は、いつ、どこでお渡しすれば良いのでしょうか?シチュエーション別に見ていきましょう。
友だちや親戚の家、お付き合いしている相手の実家を訪問したとき
個人のお宅を訪問する場合に覚えておくべき原則は「手土産は、玄関先ではお渡ししない」ということです。これは、相手との親しさの度合いとは関係がありません。どのような関係の相手であっても、まずはお部屋に通していただき、ひと通りの挨拶を済ませた後に手土産をお渡しするのが基本です。
※ただし例外として、持参した手土産がアイスクリームや生ものの場合、または植木などで土が付いているといった場合は、玄関でお渡しすることもあります。
大事な取引先を訪問したとき
ビジネスシーンでも、エントランスやロビーなどで顔を合わせた瞬間にお渡しするのはNGです。会議室や応接室に入り、名刺交換などひと通りの挨拶を済ませてからお渡ししましょう。
会食やパーティーに参加したとき
会食やパーティーの場合は、会の終了後、お別れのタイミングでお渡ししましょう。先にお渡しすると、受け取った側は会食やパーティーの間中、ずっと荷物の扱いに煩わされることになります。これでは、せっかくの手土産が仇になりかねません。このような事態を避けるため、お帰りになる際に渡すのが親切です。
お詫び・謝罪のために訪問したとき
お詫びや謝罪で伺った場合は、お詫びや謝罪を受け入れていただくことを第一に優先させます。持参した手土産は、先方の目に触れないように持参するぐらいが良いでしょう。お詫びの気持ちを品物で解決しようとしていると勘違いされないよう、手土産は謝罪が受け入れられてからお渡ししてください。
かかりつけの医師への心づけのとき
是非はともかくも、医師への心づけとして、手土産の配慮をしたいと思われる年配の方が多くいらっしゃるのも事実です。かかりつけの医師に手土産をお渡しするなら、診察が終了したタイミングでお渡ししましょう。この場合、先方に気まずい思いをさせないよう、すみやかにお渡しすることがポイントです。そのため「袋のままで失礼します」とひと言添えながら、紙袋のまま差し出すようにします。
手土産の渡し方の基本的なマナー
手土産は、自分のために貴重な時間を割いてくださることへの感謝の気持ち。その気持ちを最大限に表現するには、渡し方の基本的なマナーも重要です。
手土産の渡し方の基本的なマナー(1)手提げ袋や風呂敷に入れたまま渡さない
紙袋や風呂敷は、汚れや埃から守り、中の品物を清浄に保つためのもの。人で例えるなら、コートと同じです。よそのお宅を訪問する際、外套であるコートはあらかじめ脱ぎ、玄関などに置かせていただくはず。それと同じで、手土産は紙袋や風呂敷から取り出し、品物だけをお渡しするのがマナーです。また、使用した紙袋や風呂敷は持ち帰りましょう。
手土産の渡し方の基本的なマナー(2)品物は相手から見て正面になる向きにして渡す
紙袋や風呂敷から取り出した品物は、いったん自分の正面に持ち、汚れや傷がないことをチェックしましょう。その後、改めて相手の正面になるように向きを変え、両手でお渡しします。
場所によって異なる手土産の渡し方
手土産は、渡す場所によって渡し方の作法が違うので、注意が必要です。
和室の場合
和室に通されたら、座布団を外して座り、挨拶をします。このとき、手土産の袋は下座に置いておき、挨拶がひと通り終わったら紙袋や風呂敷から手土産を取り出し、自分の正面に置きます。
次に相手の正面になるように方向変換をして、両手で持ち上げて差し出します。畳の上をすべらせるのではなく、両手で持ち上げてお渡しするようにしましょう。机をはさんで挨拶をしないのがマナーですが、それと同様に机をはさんで品物をお渡しするのはNGです。
洋室の場合
洋室の場合、手土産は立ったままお渡ししましょう。
部屋に通されたら、自分の手荷物を部屋の隅にある台などに置かせてもらいます。手土産を取り出して自分の正面に来るように持ち、次に相手の正面に品物の向きを変え、両手で相手に差し出します。こちらも和室と同様、机をはさんでお渡しするのはNGです。
会社のオフィス(応接室や会議室など)の場合
ビジネスシーンでも、手土産をスムーズにお渡しできると良い印象を与えることができます。「紙袋や風呂敷から品物を取り出す」→「自分の正面に持つ」→「相手の正面に向けて、方向変換する」→「両手で渡す」という流れを練習しておくと良いでしょう。
ポイントは次の3点です。
①挨拶の後、着席する前に渡す
②机越しに渡すことは避ける
③紙袋や風呂敷は持ち帰る
会食やパーティー会場の場合
シチュエーションにもよりますが、会食やパーティー終了後は、さっと解散するのがスマートです。時間をかけずにお渡しすることを意識しましょう。この場合は、袋に入れたままスッとお渡しするのが良いでしょう。
手土産を渡すときに添える言葉
これまで日本では、手土産を差し上げるときに「つまらないものですが」と言葉を添えていました。謙虚さを美徳とする日本人らしい言葉の用い方ですが、昨今ではあえてこれを避ける風潮があるようです。
代わって添えるとするならば「お気に召すといいのですが」「ほんの気持ちです」「珍しいものなので」「喜んでくださるお顔が浮かびました」などはいかがでしょうか。「相手のことを一生懸命に考えて選んだ」という気持ちがストレートに表現され、贈るほうも贈られるほうもハッピーになれるのではないかと思います。これらの言葉は、どのような場面でも使えますが、シチュエーション別のおすすめの言葉も知っておきましょう。
手土産を渡すときに添える言葉(1)友だちの家やお付き合いしている相手の実家を訪問したとき
「以前、好きだとおっしゃっていたので」「好物だと伺いましたので」など。相手に関心を持ち、喜ばせたいとの思いがより感じられる言葉です。
手土産を渡すときに添える言葉(2)大事な取引先を訪問したとき
「みなさんでどうぞ」「今、人気の(話題の)品物と聞いたので」など。手土産が職場の話題提供につながり、取引先との良好な関係作りに役立ちます。
手土産を渡すときに添える言葉(3)会食やパーティーに参加したとき
「ほんの気持ちです」「お口に合うといいのですが」など。手土産について軽く触れる程度の場合は、これぐらい控えめな言葉が適切です。
手土産を渡すときに添える言葉(4)お詫び・謝罪のために訪問したとき
「心ばかりの品ですが、お納めください」など。あくまで手土産は謝罪の延長にあるものであることを認識して、相手の目を見て誠実に伝えましょう。
手土産の相場
・友だちや親戚の場合:2,000円~3,000円
・お付き合いしている相手の実家の場合:3,000円~5,000円
・ビジネスの場合:5,000円程度
・お詫び・謝罪の場合:5,000円~10,000円
手土産の選び方の基本的なマナー
手土産の選び方の基本的なマナー(1)手間ひまをかけて選ぶ
手土産は、相手が喜ぶ姿を想像して、時間と手間をかけて選びましょう。どこでも買えるものや、相手の地元のお店で買えるものなどは、適当に買ってきたような印象をぬぐえません。相手の好物や最近自分がもらって嬉しかったもの、話題の品や行列して買うものなどをほんの少し頑張って準備すると良いでしょう。
手土産の選び方の基本的なマナー(2)日持ちがするものを選ぶ
よほど親しい間柄でない限り、生ものや賞味期限の短いものは避けたほうが無難です。差し上げた相手に「急いで食べなくちゃ」という精神的な負担を与えてしまうのは避けましょう。日持ちがするものは、相手にとって楽なだけでなく、それだけ長い期間にわたって楽しんでもらえるとも考えられます。
手土産の選び方の基本的なマナー(3)値段相応のものを選ぶ
手土産は、値段相応に見えるものを選びましょう。たとえ金額をかけた品物であっても、そんな風には見えなければ、相手は自分が軽んじられていると勘違いするかもしれません。手土産は、レアでマニアックなものを準備する必要はありません。3,000円なら、3,000円もしくはそれ以上に見えるものを選んでください。
手土産の選び方の基本的なマナー(4)分けられるものを選ぶ(取引先の場合)
ビジネスシーンにおいては、分けられるものや個包装のものを選びましょう。これは、部署内で分けることを配慮してのこと。「相手の状況を想像して選び方を変える」ということも、手土産選びの基本マナーのひとつです。
手土産の選び方の基本的なマナー(5)威厳のある品物を選ぶ(謝罪の場合)
お詫びに伺う際の手土産は、謝罪が受け入れられてからお渡しするもの。しかし、その手土産が与える印象が、今後の関係性に大きな役割を果たすことを覚えておかなくてはいけません。
謝罪の際は、「この件を重く受け止めている」「真摯に向き合っている」という印象を与える手土産を選びましょう。よく知られた老舗や有名店の格式高い品物であれば、その印象作りに一役を担ってくれます。手にしたときに実際の重量もあるような、落ち着いた品物がお詫びの気持ちを表現するのにおすすめです。
手土産はどんなものがおすすめ?
慶弔事とは違い、決まりごとがない分、気軽に選べるのが手土産の良いところです。相手が喜ぶ顔、驚く顔を想像して選びましょう。
和菓子
老舗のカステラや羊羹、季節と結びついた四季折々の行事に関わる和菓子は、見た目の美しさも相手を喜ばせることでしょう。和菓子の格式は、お詫びの場や、少し改まった相手への手土産にも最適です。
洋菓子
お子さんや若い方が多い家庭では、特に喜ばれるのが洋菓子です。ケーキやチョコレート、焼き菓子やプリンなど、どのような場面においても手土産として間違いないのが洋菓子の魅力です。
お米
手土産として人気上昇中なのが、小分けして包装されたお米です。産地や種類にこだわったお米を少量ずついただけるのがポイント。定番の甘いものではなく、どこの家庭でも必要なものをギフトに昇華させたお米は、手土産の新しい形といえます。小分けスタイルであれば、ビジネスシーンでも使い勝手の良い手土産になるでしょう。
調味料
「出汁」「塩」「オリーブオイル」「醤油」などの調味料を手土産に選ぶなら、いずれも産地や種類にこだわった特別なものを選ぶようにしましょう。友人や親戚などであれば、好みを知り得る分なおさらのこと、気の利いた手土産としておすすめです。
まとめ
「人から何かをいただくよりも、人に何かを差し上げるほうが楽しい」という友人がいます。相手の喜ぶ顔を想像して、どのような品物にしようかと考えるその期間が楽しいのだそうです。手土産をお渡しする際には今回ご紹介したマナーがありますが、それ以上に相手のことを考えた品物選びが重要です。「渡し方」と「品物」の2つがそろって初めて、「人に何かを差し上げて楽しい」「人から何かをいただいて嬉しい」が成立するのでしょう。
最近は「つまらないものですが」という言葉をあまり使わなくなったように、社会の変化に伴って変わっていく文化があります。ギフトとしての品物も同じです。定番の商品だけでなく、最近特にギフトとして注目されているものも多くあります。例えば手土産の選択肢のひとつとして、お米もご覧になってみてはいかがでしょうか。
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