最終更新日:2024-01-11
百貨店やデパートで買い物をした際、店員さんから「ご進物用ですか?」と尋ねられたことがありませんか?聞き慣れない「ご進物」という言葉に戸惑ってしまった人もいるかもしれません。また、似た言葉に「贈答」がありますが、違いを正しく理解できている人は少ないでしょう。
そこで今回は、ご進物について詳しく解説。読み方や「贈答」との違い、のしのマナーやよく選ばれている品物についてマナー講師がお伝えします。
ご進物とは?
進物は「しんもつ」と読み、他人に進上する品物、贈り物を意味します。「進上する」という言葉からもわかるように、目上の人へ差し上げる贈り物、献上品ということです。
一般的に目上の人とは、上司や先輩など、自分よりも地位や年齢が上の方をいいますが、ご先祖や亡くなった方も含まれます。そのため、「ご進物」という場合には、弔事の品物も含んだ贈答全般を指します。
「ご進物」と「贈答」の違い
贈り物という点では、ご進物と贈答は大きく異なりませんが、元々の言葉の意味を考えると、多少のニュアンスの違いがあります。
「ご進物」は目上の方に差し上げる品物のことをいう一方で、「贈答」は相手を喜ばせるために贈ったりお返ししたりする品物を指します。とはいえ、何かを差し上げるときに、相手が目上かどうかを意識して言い方を変える必要はありません。
つまり、あらゆる贈り物はすべて「贈答」に分類され、その中でも特に、季節の習わしや行事に関する贈り物、フォーマルな体裁が必要な贈り物、弔事で差し上げる贈り物が「ご進物」というわけです。
例えば、「結婚祝い」の贈り物は「贈答」ですが、もしも百貨店で品物選びをしていれば「ご進物ですか?」と聞かれることでしょう。このようにたいていの贈り物は、「ご進物」と「贈答」どちらでも間違いではないのです。
※ただし、弔事に関する贈り物だけは「贈答」とは表現しないので注意が必要です。
「ご進物」を使うケース
贈り物の対象が目上の人で、そこにはご先祖や故人も含まれることから、弔事も含めた贈り物を指すときに「ご進物」を使います。熨斗、水引、掛け紙で品物を整えたフォーマルな贈り物全般の場合に該当します。
(例)結婚祝い、出産祝い、入学祝い、病気見舞い、新築祝い、中元、歳暮、葬儀、法要など
「贈答」を使うケース
相手に喜んでもらうために贈るものはすべて「贈答」です。差し上げたり、頂いたりするもの、弔事以外の贈り物、気軽なプレゼントも「贈答」です。
(例)結婚祝い、出産祝い、入学祝い、病気見舞い、新築祝い、中元、歳暮、手土産、誕生祝い、記念日祝いなど
ご進物にまつわるマナー
日本に古くから伝わる行事や習慣には、いつも「贈り物」があります。「贈り物」は、贈る側が相手へのお祝い、お礼、挨拶、お悔やみの気持ちを託す心。そんな中でもご進物といわれる場合は、フォーマルな贈り物です。品物に込めた心をまっすぐに相手に届けるために、きちんとしたマナーを守って贈りたいものです。
ご進物にまつわるマナー(1)掛け紙の書き方
日本では昔から、贈り物には「(品物を」包む」「(水引で)結ぶ」「(表書きを)書く」という手順が必要とされてきました。これは「ケガレ」を嫌う日本文化によるものです。「包む」「結ぶ」「書く」は、贈る品物を清浄に保ったまま相手へ届けるため、また贈り物の目的をはっきりとわかるようにするために必要な体裁の整え方なのです。
【慶事の場合】
・掛け紙:右上に熨斗のついた熨斗紙を使用
・水引:(色)白赤、金銀、金赤 (結び方)蝶結び
※結婚祝いは、鮑結び(淡路結び)もしくは結び切り
・表書き:結婚祝い「寿」「御結婚御祝」、出産祝い「寿」「御出産御祝」、入学祝い「御祝」「御入学御祝」、新築祝い「御新築御祝」「御新居御祝」、中元・歳暮「御中元」「御歳暮」
※病気見舞いは、熨斗なしの掛け紙に、水引は白赤結び切り「御見舞」
【弔事の場合】
・掛け紙:熨斗のついていない掛け紙を使用
・水引:(色)白黒、白黄、双白、双銀 (結び方)結び切り
・表書き:葬儀「御霊前(共通)」「御香料(仏教)」「玉串料(キリスト教)」、法要「御仏前」「御供物料」「御供」
【表書きを書く際の注意点】
1.毛筆で書くのが正式です。小筆を用意することができなくても、筆ペンを使用して書きましょう。ボールペンや万年筆、マジックはNGです。
2.楷書で書くのが正式です。どのような性質の贈り物かを一目瞭然でわかるようにするのが表書きの役割です。
3.上から1文字空けて書き始め、水引の上に1文字空けて書き終わるように調整して表書きを書きます。
4.関西地方では、四文字の表書きは死文字に通じるとして嫌われることがあります。気にする方や年配の方への贈り物の場合は、1文字増やして5文字にするなど、注意しましょう。
(例)「入学御祝」→「御入学御祝」、「還暦御祝」→「還暦之御祝」
ご進物にまつわるマナー(2)品物の選び方
日本の文化には、これまでの長い歴史で培われてきた特別な心遣いが伝えられています。心を託す贈り物が、相手を不快にさせてしまうことのないよう、基本のマナーを知っておくことが大切です。
例えば、靴下は目上の人にはタブーとされますが、とても質が良く、相手に喜んで頂きたくて選んだのであれば、「目上の方に失礼かとは存じますが」とひと言申し添えるようにしましょう。これは基本のマナーを知っていればこそできること。ご進物も贈答も、相手のことを真剣に考えて、相手が喜ぶ顔を想像しながら贈るコミュニケーションツールといえます。
【贈り物にはNGとされる品物】
・かばん、時計:「より勤勉に」という意味なので、目上の人にはNG
・靴下、靴:「経済的に困っている」「踏みつける」という意味から、目上の人にはNG
・ハサミ、ペーパーナイフなどの刃物類:「(縁を)切る」という意味から結婚祝いにはNG
・鏡、陶磁器:割れものなので、結婚祝いにはNG
・灰皿やキャンドル:火を連想させる物は、新築祝いや開業祝いにはNG
・日本茶:弔事によく使われる品物のため、慶事には使用しないのが無難
・花:シクラメンは数字の4と9を連想させるのでNG。その他、花言葉も要チェック
・生もの:肉や魚など未調理の食材は弔事にはNG
ご進物の相場
ご進物は、日本の行事や習わしに付随した贈り物です。そのため、相手との関係や、目的、相手の年齢、家庭の環境などを考えて選ばなくてはいけません。
さらに注意すべきことは、相場です。まずは一般的な相場を知ること。相場より格段に高くても安くても、相手の自尊心を傷つけてしまうことになりかねません。それでは贈り物の意味がなくなってしまうので、適切な価格を意識して選ぶようにしましょう。
一般的な友人・知人へのご進物相場は次の通りです。贈る相手との関係が親戚同士のように関係が近くなるほど、また、上司から部下のように立場が上から下へとなるほど、この相場は高くなります。
※以下は贈り物の合計金額の目安です。現金と品物を組み合わせる場合は、振り分けて準備すると良いでしょう。
・結婚祝い:30,000円(披露宴出席の場合)、11,000円(披露宴欠席、または招待されていない場合)
・出産祝い:5,000円~10,000円
・入学祝い:5,000円~10,000円
・病気見舞い:5,000円~10,000円
・新築祝い:5,000円~20,000円
・中元:3,000円~10,000円
・歳暮:3,000円~10,000円
・葬儀:5,000円~10,000円
・法要:5,000円~10,000円
この表からもわかるように、大まかにいえば、ひとつの事柄に10,000円が相場と覚えておくと良いでしょう。
ご進物によく選ばれる品物
贈る相手の家族環境や嗜好をよく知っているというのであれば、話は簡単でしょう。ところが、たいていの場合、せいぜいお子さんや高齢のご家族がいらっしゃるかどうかといった程度の情報しか持ち合わせていないのではないでしょうか。そのため、どなたにも喜んでいただけて、無駄にならないような品物を選ぶのがカギとなります。できれば、食べてなくなるものがおすすめです。
・和菓子や洋菓子
ご進物といえば、和菓子や洋菓子が代表的。和菓子を選ぶときは、おせんべいやおかきなどではなく、羊羹や最中などを選ぶと高級感が増します。なぜなら、人は手に持ったときの重さで、無意識に値打ちを測る傾向にあるからです。ずっしりと重みのあるもののほうが「良いものをもらった」と喜んでいただけるでしょう。
なお、小さいお子さんがいらっしゃる場合は洋菓子が好まれますが、バターや卵・牛乳などアレルギーの有無には注意しましょう。
・果物
ご進物のフルーツは、日常生活ではあまり手を出さないような高級品が多いもの。どなたにも喜んでいただけること請け合いです。産地直送などのシステムも発達しているので、おすすめです。
・ジュースなどの飲料品
飲料品の良いところは、日持ちがするところです。こだわった天然のジュースや炭酸水など、ちょっと素敵な飲み物がストックできるのは嬉しいのではないでしょうか。
・ごはんのお供
最近、さまざまなごはんのお供がクローズアップされています。地方の珍しいものであったり、有名な料亭の品であったりとバラエティに富んでいます。日本の食文化にぴったりとマッチしたごはんのお供はおすすめです。
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・お米
ひと昔前は、お米はどの家庭にも普通にあるもので、贈り物という感覚はなかったかもしれません。ところが今では、「おいしいお米」が立派なブランドとして、贈ったり贈られたりする人気の品物になりました。お米の良いところは、なんといってもその汎用性です。どなたにも喜ばれる間違いのない品物といえます。
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まとめ
ちなみに、私がご進物を選ぶときに大切にしているのは、箱を開けたときの感動です。受け取った方が箱を開けたときの歓声が聞こえるような品物を意識して選ぶようにしています。
その点でお米ギフトは、クオリティはもちろん、見た目への配慮も行き届いているため、目上の方からの評判も上々の品物です。ご進物をお考えの際は、ぜひ一度ご覧になってみてください。