そもそも香典返しとは?今さら聞けない基本的なマナーを解説

そもそも香典返しとは?今さら聞けない基本的なマナーを解説

最終更新日:2022-06-13

いただいた香典に対し、御礼の品をお渡しする香典返し。その由来をご存知でしょうか?

本記事では、香典返しの概要をおさらい。渡す時期や金額の目安といった今さら聞けない香典返しの基本的なマナーをはじめ、その由来や地域差についてマナー講師が解説します。

そもそも香典返しとは

「香典返しって、お通夜や告別式に来てくれたときに渡すものでしょう?」

そんな勘違いをしていませんか?お通夜や告別式に来てくださった方にお渡しするのは「会葬御礼」といい、「香典返し」とは別物です。「会葬御礼」は文字通り、通夜や告別式に駆けつけてくれたことへの御礼です。お礼の手紙や葉書、お浄めの塩と一緒に、一律1,000円程度の粗品をお渡しします。

一方で「香典返し」は香典に対する返礼品です。忌明けの時期に持参、もしくは配送します。こちらは、いただいた香典の額に応じた金額で準備します。たいていの場合は、半返しが一般的です。

「会葬御礼」と「香典返し」。まずはこの違いをしっかりと認識しましょう。

香典返しの由来

元々は線香を供えたことが「香典」の語源とされており、日本で古くから続く習慣です。葬儀が地域共同体としての行事であった時代、人が亡くなると、近所や親戚が総出で通夜や葬儀を手伝いました。葬儀家(身内が亡くなり、弔いをする家)は、手伝ってくれる人の食事を負担するのが常で、その負担を軽減するために、近所や親戚の人たちは食料や飲料を香典として供えたのです。貨幣文化が発達すると、香典を金銭で供えるようになります。江戸時代には香典として頂いた金額を帳面に記録し、相手に不幸があった際には、同額をお返ししたという記録も残っています。

時代と共に形を変えながらも、香典や香典返しの習慣は、今に引き継がれてきました。いずれにしても、日本人の「お互い様」精神や「いただきっぱなしにはできない」気質が、香典返しの習慣を根付かせたといえるでしょう。

香典返しの基本的なマナー

香典返しのマナー(1)渡す時期

仏教

忌明けの四十九日後に渡します。仏教では、亡くなった日から数えて49日間は、故人の魂は現世にとどまるとされています。四十九日後に、成仏して極楽浄土に行くと考えられているので、この日が遺族にとっての忌明け。

「香典をいただき、ありがとうございました」というお礼と「おかげさまで49日間の弔いをつつがなく終えました」という報告の意味で、四十九日法要後の1か月以内を目途に香典返しを渡します。

※四十九日を「満中陰」ということから、関西では香典返しのことを「満中陰志」といいます。

※四十九日が3か月後になることは「みつきまたぎ」といい、縁起が悪いとされているため、三十五日の法要で切り上げる場合もあります。

キリスト教

キリスト教では、香典ではなく「御花料」です。それに対してのお返しをします。

カトリックでは、亡くなってから30日目の追悼ミサの後、1か月以内を目途に、またプロテスタントでは、1か月後の召天記念日の後、1か月以内を目途に渡します。

神教

神教では、香典ではなく「御玉串料」です。それに対してのお返しをします。

亡くなってから50日目の「五十日祭」の後、1か月以内を目途に渡します。

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香典返しのマナー(2)金額

香典返しはたいていの場合、半返しが一般的です。10,000円を香典として頂いたら、その半額の5,000円程度の品物をお返しします。ただし、例外は次の3点です。

  亡くなったのが、一家の収入の担い手である場合

この場合は、半返しにこだわる必要はありません。三分の一程度のお返しで良いでしょう。「遺された家族の今後の生活のために役立ててほしい」という思いで香典を包んでくださることがほとんどだからです。

  親戚や知人から高額の香典を頂いた場合

この場合も、遺された家族の今後を案じて、高額を包んでくださっています。お返しは、三分の一や半額にこだわらず、3,000円~5,000円程度でお返ししましょう。

  当日返しの場合

さまざまな習慣の合理化・簡素化と共に、通夜や告別式当日に会葬御礼だけでなく香典返しもお渡しするケースが見受けられるようになりました。その場合は、頂いた香典の額がわからないので、一律2,000円~3,000円の品物を準備します。これは5,000円~10,000円の香典を頂くことを想定しているもの。これよりも多い額の香典を頂いたら、通常の香典返しの時期に、差額分の香典返しを改めてお渡しすると良いでしょう。

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香典返しのマナー(3)渡し方

昔は、四十九日法要が終わった後、通夜・告別式に参列してくださった方のお宅を一軒ずつ訪問して、香典返しをお渡ししました。しかし昨今では、配送でお届けするスタイルが主流です。

もちろんご近所の方や近くにいる親戚などには、直接伺ってお渡しするに越したことはありません。配送でのお届けが無礼というわけではないので、相手により適切に判断すると良いでしょう。

手渡しの場合

手渡しの場合は、お手紙を同封する代わりに、お礼(香典への感謝)と、報告(つつがなく四十九日を終えたこと)を口頭でご挨拶します。訪問時には、あらかじめご都合を聞き、アポイントを取って伺うようにしましょう。もし先方に慶事がある場合は、少し時期をずらすなどの配慮が必要です。

※喪服を着用する必要はありません。

配送の場合

配送でお届けする場合は、香典返しの品物に、お礼と報告の挨拶状を同封します。差出人は喪主です。こちらも先方に慶事があることを知っている場合は、少し時期をずらす配慮があると良いでしょう。

香典返しのマナー(4)挨拶状

香典返しの挨拶状のポイントは、次の5点です。

① 頭語・結語は、なくても良い

② 季節の挨拶は不要

③ 内容は以下の4点

「香典へのお礼」

「つつがなく四十九日法要を終えた報告」

「香典返しの品物を贈ること」

「略儀で済ませることへのお詫び」

④ 句読点は使用しない

⑤ 薄墨は使用しないで良い

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香典返しのマナー(5)掛け紙

日本の贈答習慣では「かける」「包む」「結ぶ」の3点が基本です。これは「誰がどのような目的で贈るかを明確にする」「品物を清浄に保つ」という意味があります。

香典返しは弔事ですので、掛け紙の右上に熨斗があしらわれたのし紙ではなく、熨斗のついていない掛け紙を使用します。また水引は、一般的には白黒の結び切り、関西地方では白黄の結び切りを使用。弔事では「繰り返すことがないように」との思いから、一度結ぶと簡単にはほどけない、結び切りを用います。

持参する場合は、外のしを選ぶのが正式ですが、配送の場合は、配送途中に掛け紙が破損するのを避けるため、内のしにするのが一般的です。

表書きは、「志」あるいは「満中陰志」と書きます。水引の下には、葬儀家の苗字、もしくは苗字+家と書きます。

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香典返しの地域差

香典や香典返しの習慣は、それぞれの地域特有のスタイルがあります。育った場所から遠く離れた地方へ嫁ぐ、転勤や引っ越しで知らない土地に暮らすなど、その地域でのマナーを知らないと困ることもあるでしょう。そして、このような冠婚葬祭のマナーの違いが、ときにトラブルになることもあるので、相互理解が必要です。たいていの場合は、コミュニケーションをとることで解決できることが多いので、知らない地域でのやり方について「わからなければ尋ねる」ことが大切です。

一般的な香典・香典返しとは違う地域について、次に説明します。

北海道地方

北海道は、本州とは異なる習慣があります。これには、土地の広さや気候の厳しさが大きく関係しています。親戚や知人が簡単に集まることができないので、なるべく通夜・告別式に合わせて法要も済ませてしまうという考えです。告別式当日に四十九日法要も執り行うことが多く、香典返しも当日返しです。

北関東地方

群馬、栃木、埼玉、長野の一部地域には、戦後盛んだった「新生活運動」のなごりで、冠婚葬祭の金銭的な負担を軽減する文化が残っています。例えば群馬県の告別式では、受付が「新生活」と「一般」に分かれており、新生活運動に賛同する人は、香典を1,000円包み、香典返しは辞退します。また、これを受けて葬儀家も香典返しはしません。

沖縄地方

通夜・告別式に始まり、さまざまな法要にも沖縄独特の風習があるので、注意が必要な地域です。

まず香典自体の相場は1,000円~3,000円と一般よりも低い設定ですので、香典返しの金額は500円~1500円程度です。また会葬御礼の金額も500円~1,000円が最も多い価格帯です。そのため、会葬御礼を香典返しと一緒にして、即日返しすることがほとんどです。

これは一般的な通夜・告別式でも、200人~300人が集まることが多い沖縄の人間関係の豊かさにも関係していると思われます。ただ他県の人にとっては、高額の香典にもかかわらず一律での香典返しであることや、お礼状や挨拶状もなしといった沖縄の風習にとまどうことも少なくないでしょう。沖縄では当たり前でも、ほかのほとんどの地域では当たり前でないことを踏まえ、お互いのコミュニケーションで補う努力が必要かもしれません。

近年の香典返しの在り方

時代の変化と共に、通夜・告別式や法要のあり方も変わります。ここ最近の急激な変化は、新型コロナウイルスが及ぼした影響です。人が集うことが難しくなったことにより、従来よりも簡素化された、小規模な葬儀や家族葬を選ぶ家庭が増えたといわれます。

しかし一方で、こんなときだからと、故人への弔いの気持ちを香典に託して届けたいと思う人がいるのも事実です。香典は、故人の遺志でない限り、遺族が辞退するものではありません。そして香典返しは、頂いた香典に対して故人に代わり遺族がお返しするもの。感謝の気持ちを込めた品物を選び、失礼のないよう先方にお届けしましょう。

簡素化・合理化できる点と、大切に守るべき点があります。直接に会う機会が減ったら減った分、香典のお返しには、これまで以上に心を配り感謝の気持ちを託すようにしましょう。

まとめ

香典は、身内が亡くなったときにいただくものですので、ほとんどの人にとっては日常生活であまり頻繁にあることではありません。香典返しについて、知らないことばかりでも当然です。

しかし、いざ家族が亡くなったそのとき、社会人として葬儀家として、どのように対応するかはとても大切なことです。心を寄せてくださった方々に、いかに礼を尽くして感謝の気持ちを伝えるか。基本的なマナーを知っておくことで、いざというときに慌てずにしっかりと役目を果たすことができるでしょう。

なお、香典返しに関するマナーや不明点などがあれば、下記をご覧ください。

https://www.okomeya.net/kouden

【執筆者プロフィール】

城戸景子
STUDIO STELLA代表
イメージコンサルタント/ビジネスマナー講師

神戸女学院大学文学部英文科卒業。コンピュータソフトウエア会社に就職後、営業秘書、営業に従事。その後転職、退職、結婚、子育てを経て、イメージコンサルタント資格を取得。外見のイメージ作りによる印象戦略の次は、内面を表すマナーが重要と考え、ビジネスマナー講師資格を取得。特にマンツーマンでのビジネスマナー研修は、内容が充実、日常のささいな疑問も解決できた、分かり易い上に印象に残ると人気。ビジネスマナー、生活マナー等マナー全般についてのオンラインコンサルティングも実施。お問合せ、ご相談はHPのお問合せから。

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