最終更新日:2023-01-30
葬儀に参列した際、受付で記帳する「芳名帳(ほうめいちょう)」。その目的や正しい書き方は意外と知られていません。
今回は、芳名帳の書き方について、参列状況や芳名帳のタイプ別に分けてマナー講師が解説します。葬儀には芳名帳のマナーを守って参列できるようにしましょう。
葬儀の芳名帳とは?何のために書く?
芳名帳は「どこの」「どなた」が葬儀に参列したかを記録するためのもの。「芳名禄」ともいいます。自宅で葬儀を行う場合には芳名帳がないこともありますが、一般的には受付に準備されています。
会葬者は受付で芳名帳に名前と住所を書き、持参した香典を渡した後、会場に入ります。通夜と葬儀、両方に参列するときは、それぞれの芳名帳に書くのが通例です。
葬儀には、故人の知り合いが多数参列します。遺族が「どこの」「どなた」が来てくれているのかをすべて把握するのは困難でしょう。その点を芳名帳が補ってくれます。芳名帳は、いわば「参列者名簿」なのです。
葬儀終了後、喪家は芳名帳に頂いた香典の情報を加えて「香典帳」を作成します。そして後日、香典帳をもとにお礼状や香典返しを送ります。そのため、記帳するときには住所や名前に間違いのないよう、丁寧に正確に記帳するのが礼儀であり、喪家への思いやりです。
【参列状況別】葬儀の芳名帳の書き方
芳名帳には、参列の状況に応じた書き方があります。個人として参列しているのか、または仕事関係で参列しているのかなど、遺族が後日きちんと状況を理解できるよう正しく記入しましょう。
個人で参列した際の芳名帳の書き方
芳名帳において最低限必要な情報は、住所と名前です。基本的には「芳名帳には住所と名前を書く」と覚えておけば良いでしょう。
名前は正しい漢字を楷書のフルネームで書くこと。また、住所は省略せず、数字は丁寧に書きましょう。郵便番号も忘れずに。
長らくご無沙汰していて自身の状況が変化したなどの理由で「旧姓も併せて書いておいたほうが良い」と思われる場合は、旧姓も記入しましょう。
夫婦あるいは家族で参列した際の芳名帳の書き方
夫婦・家族の場合は、住所を記入し、夫の名前をフルネームで書きます。次に、縦書きであれば「夫の名前の左側の行」、横書きであれば「夫の名前の下の列」に、一行(一列)使って妻の名前を書きます。妻の姓は書きません。
子どもも一緒に家族で参列している場合は、妻の名前の次に、一行(一列)ずつ使って子どもの名前をそれぞれ記入します。子どもも、妻同様に姓は不要です。
※夫の氏名の後に「家」と記入することで、家族で参列したことを表す方法もあります。ただ、芳名帳は参列者名簿であることを考えると、参列した一人ひとりの名前を書き記すことが、故人への供養のひとつとして喪家へのなぐさめになるように思います。
夫の代理で参列した際の芳名帳の書き方
夫の代理で参列した場合は、妻の氏名は記入しません。夫の住所・氏名を記入し、縦書きであれば「夫の氏名の左下」に、横書きであれば「夫の氏名の右下」に、少し小さい字で(内)と書きます。夫の氏名に(内)を付けることで、妻が代理で参列したということを表します。
※受付で挨拶をする際に「夫の代わりに参列した」旨を伝えるとスムーズです。
会社・団体で参列した際の芳名帳の書き方
会社や団体の代表として参列した場合は、会社の住所を記入し、会社名・部署名・グループ名を正確に書きます。そのあとに必ず「代表」と記入し、自分の名前を書きましょう。これは個人として参列しているのではなく、会社を代表して参列していることを表すためです。
※会社の住所をスムーズに書けるよう、あらかじめ名刺などを準備しておくと良いでしょう。
上司の代理で参列した際の芳名帳の書き方
仕事関係の方の葬儀に上司の代理で参列することもあるでしょう。その場合は、会社の住所、会社名、部署名、上司の役職、上司の氏名を記入します。次に、縦書きであれば「上司の氏名の左下」に、横書きであれば「上司の氏名の右下」に、(代)または(代理)と書きましょう。
ただし、自分も香典をお供えする場合は、上司の代理として上司の分の記入を終えた後に、自分の住所・氏名を改めて記帳してください。
※受付で挨拶をする際に「〇〇さんの代理で参列した」旨を伝えるとスムーズです。
※会社の住所、上司の役職、氏名などを正確に記入できるよう、上司の名刺を準備しておきましょう。
【芳名帳のタイプ別】葬儀の芳名帳の書き方
芳名帳は、従来からあるノートに縦書きのシンプルな罫線が入ったものだけでなく、さまざまなタイプのものがあります。ここでは、ノートタイプをはじめ、そのままリストになる表タイプと独立型のカードタイプを加えた3種類の芳名帳の特徴と、それぞれの書き方を見ていきましょう。
ノートタイプの芳名帳の書き方
ノートタイプの芳名帳は、昔から使われている一般的なタイプで、縦書きの和紙製が多いようです。縦書きですので、右から左の順で書き進めます。住所を書いたら、行を変えて次の行に氏名を書きます。
日常生活では手書きの機会すら減っている昨今、人前で記帳することに緊張してしまうかもしれません。しかし、上手いか下手かは問題ではありません。訃報を受け「ここに参りました」という事実を、丁寧に正確に記録することが重要なのです。
表タイプの芳名帳の書き方
表タイプは文字通り、芳名帳の記入欄が表になっているものです。一番上の行に項目が提示されてリストになっているので、どこに何を書けばいいのかが一目瞭然です。表タイプの芳名帳は横書きなので、さほど抵抗なく記入しやすいでしょう。
カードタイプの芳名帳の書き方
「1枚に1人の情報」というのが、カードタイプの芳名帳の特徴です。ノートタイプや表タイプと違い、自分の書いたものを他の会葬者に見られる可能性がありません。
また、会社名や故人との関係、通夜に来たのか葬儀に来たのかなど、葬家が知りたい情報がコンパクトにまとまっているので、スムーズに記入が進みます。その上スペースがあれば、同時に何人もが記入できるため、受付での待ち時間が減るともいえます。カードタイプの芳名帳でも、聞かれていることで書ける情報はすべて書くようにしましょう。
「代理で来たが、自分の香典も持参した」という場合は、代理として1枚、自分の名前で1枚と、別々に情報を書いてください。なお、家族の場合は、1人ずつ書くよりは、家として1枚にまとめるケースが多いようですが、どうすれば良いかは受付にて確認するようにしましょう。
芳名帳に関する基本的なマナー
訃報は、突然にやってくるもの。そのときに慌てて無作法をすると、後悔することになりかねません。葬儀に参列し、芳名帳に名前を書く際の基本の流れを知識として知っておくことは、社会人としてとても大切なことです。
芳名帳に関する基本的なマナー1(まずは挨拶)
葬儀会場に到着したら、最初に受付に向かいましょう。受付は遺族ではなく、たいていは友人や会社の方が務めています。受付周辺に遺族がいらっしゃることもありますが、いなくても受付の方にお悔やみの挨拶をしてください。特別なことを言う必要はありません。「この度はご愁傷様でした」または「心からお悔やみ申し上げます」と簡潔に。受付に人が多く並んでいる場合は、無言で会釈をするだけでも大丈夫です。
葬儀の際の挨拶は「言葉数を少なく」が鉄則です。これは第一に「賑やかにわいわい騒ぐ場ではない」ということからですが、第二には「言葉数が多くなると、要らぬことを言ってしまう確率が高くなる」からです。
葬儀では、相応しくないとされる言葉がいくつかあります。例えば「くれぐれも」「たびたび」といった重ね言葉や、「苦しい」「浮かばれない」といった忌み言葉です。葬儀などの特別な環境では、普段言わないようなことを言って失敗してしまいがちです。要らぬことを口走ってしまうのを避けるためにも、言葉数は少なくするのが賢明です。
芳名帳に関する基本的なマナー2(正しく記帳)
受付で芳名帳に記帳をします。わからないことがあれば、受付に確認しましょう。字が上手くなくても、楷書で丁寧に書くことを心がけてください。後で喪家の方が見たときに読み間違いがないよう、数字はきちんと書くようにしましょう。
また、住所や郵便番号も、自分の解釈や癖で崩して書いたり省略したりしないことが大事です。誰が見てもきちんとわかるように書くことが、芳名帳に関する基本的なマナーです。
芳名帳に関する基本的なマナー3(香典を渡す)
受付で挨拶をして記帳をしたら、持参した香典を渡します。香典は必ず袱紗に入れて持参しましょう。ポケットから角が折れた不祝儀袋を取り出したり、買ったときのビニール袋に入った不祝儀袋を取り出したりといったことはNG。すぐ取り出せるよう準備しておくのがスマートです。
香典は、差し出すときに袱紗から出します。袱紗のまま渡すのはマナー違反ですので、注意してください。袱紗から取り出したら、香典袋を相手に向けて正面になるようにして渡します。元々は、お盆の上に乗せた香典袋を袱紗で包むのが正式ですが、この頃では慶弔両方で使える台付き袱紗が一般的です。袱紗の色は、紫、紺、グレーなどのシックな色を使用しましょう。
香典は、通夜に参列する場合は通夜で、葬儀に参列する場合は葬儀で渡します。通夜と葬儀の両方に参列する場合、それぞれに記帳は必要ですが、香典はどちらか一方に持参します。そしてその旨を、受付時に伝えると良いでしょう。
まとめ
芳名帳に必要な情報は、参列者の住所と名前です。しかし、個人としての参列と会社としての参列では、書き方や内容が違います。会社の場合は、住所を含む会社情報の記入が必要ですし、誰かの代理で参列する場合は依頼した人の情報を記入しなくてはいけません。日常生活ではおよそ目にすることのない芳名帳ですが、書き方にはマナーがあることを知っておくのは大切です。
ただ、難しく考える必要はありません。多くのマナー同様、その根底にあるのは思いやりです。芳名帳は、喪家のためのものですから、喪家がわかりやすいように記帳することが何より大事なマナーと心得ましょう。
ちなみに、喪家は芳名帳をもとに後日お礼状や香典返しを準備しますが、大変な労力が必要です。しかも、それに費やせる期間は四十九日までですから、実質たったひと月ちょっとです。その負担を減らすことのできる「芳名帳転記サービス」を八代目儀兵衛ではご提供しておりますので、是非ご利用くださいませ。