お米とともに生きる25歳若手生産者の“野望”ー「第10回お米番付」優秀賞:白井 涼輔さん

お米とともに生きる25歳若手生産者の“野望”ー「第10回お米番付」優秀賞:白井 涼輔さん

最終更新日:2024-04-24

2023年も開催された八代目儀兵衛の「お米番付 第10回記念大会」の優秀賞に輝いた、白井涼輔さんの茨城県久慈郡大子町「コシヒカリ」。今年初開催の、就農5年以内で良食味のお米づくりを追及する「U-5部門」の最優秀賞とW受賞を果たした、前途多望な25歳の若手生産者さんです。白井さんにおいしいお米づくりについて、またこれからの“野望”についても伺ってきました。

隠れた名産地、大子町の田園風景を継承し守りたい

茨城県久慈郡大子町のお米は「おかずになるほど味わい深くておいしい」と言われる隠れたお米の名産地。おいしいのに全国的にはあまり知られていない理由は、生産量が少なく町外への流通量が少ないことが挙げられる。また、大子町には粘土質の土壌が多い。粘土質の土壌で育ったお米は、人が口にしたらおいしいと言われることが多いが、食味計では良い数値が出にくい。そのため一般的なお米のコンテストでは評価されにくい傾向にあるのだ。

そんな隠れたお米の名産地である大子町で、5代以上前からお米づくりを行ってきた白井さんのご家族。白井さんが幼い頃、田んぼは全部で1.5ヘクタールほどの面積だったが、現在は全部で約6ヘクタール。原因は地域の生産者の高齢化により、年々借り入れる田んぼが増えたことだった。

幼い頃からあぜ道を散歩してきた馴染みのある風景は、白井さんにとって宝物のような存在。豊かな自然があり、人の心を解放させる大子町。この魅力を他の地域から遊びに来た人たちにも共有するため、22歳になる歳に白井さんは就農を決意した。失われゆく大子町の田園風景を守るため、今日まで広大な田んぼを継承し耕してきた。

大子町の豊かな自然と共存するため、自然にとって優しいお米づくりも心がける。地元茨城県の常陸牛の母牛を飼育して子牛を飼育農家さんに受け渡す、繁殖農家でもあるため、稲藁は牛の餌、籾殻は敷床として、さらに牛糞は堆肥に加工してお米づくりに活用するなど、循環型農業を行う。農薬の使用量も必要最低限にとどめ、特別栽培米の基準よりも少ない。今年、令和6年からは特別栽培米として販売される予定だ。

協議会でおいしいお米づくりを勉強し、「お米番付」W受賞

大子町では、“食味計では評価を得にくいけれど、食べたらおいしい”そんなお米の魅力を他の地域にも知ってもらうため、2009年に「大子産米販売促進協議会」という団体が設立された。白井さんもその一員だ。協議会ではおいしいお米づくりを行うために勉強会が定期的に開かれている。

勉強会では地域の生産者さん同士で、稲の健やかな成長のために意見交換を行う。たとえば盆地のような地形の大子町は、夏は全国の中でもトップクラスに暑い地域。暑さのピークは7月下旬で、昨年は最高気温が39度に達することもあった。このちょうど暑い時期にお米づくりの中で一番大切と言われる出穂の時期が重なってしまう。勉強会ではそんな時に、意見を交わして対策を考える。白井さんの暑さ対策は、夏場の田んぼの水の入れ替えを毎日行うこと。この地域は中山間地域に位置し、山の源流の距離から10kmほどと比較的近い。この山から直接届いた綺麗で冷たい水を、夜7時から田んぼに入れて朝6時に止めるという作業を毎日繰り返す。こうすることで、昼間に熱を持った稲の温度を夜間に下げることができ、より一層味わい深く、おいしいお米が育まれるのだそう。

白井さんは大子町のことをもっと他の地域に知ってもらうため、就農1年目から様々な食味コンテストにエントリーしてきた。しかしこれまでは、評価されるも最終審査まで残ることができなかったりと、爪痕を残すことができなかったそう。先述の通り、食味計では評価を受けにくい大子町のお米。そこで白井さんは「食味計を使用せず全て人の舌で審査を行う八代目儀兵衛の『お米番付』なら良い評価をもらえるかも」と考える。就農3年目となる昨年、今度こそ実績を作りたいと思って「お米番付 第10回記念大会」にエントリー。結果、「U-5部門」だけでなく総合部門でも受賞でき、白井さんにとって大きな収穫となった。「今回八代目儀兵衛の『お米番付』という名の知れた大会で初めてきちんとした結果を残すことができたのは、とても嬉しかったです。来年以降は今回いただいた優秀賞以上を目指していけたらと考えています」と今後の目標を教えてくださった。

“おいしいお米の体験”を通じて消費者のイメージを変える

お米の消費量は年々減少している。これに対し、「本当においしいお米を食べたことがある人は実は少ないのではないか?」と、お米が食卓に並ぶ頻度を増やすために消費者のお米に対するイメージを変えることも重要だと考える白井さん。ただ精米を販売するだけではなく、“おいしいお米の体験”を提供する機会を独自に作り出すことで、問題解決に取り組む。

現在は、地元のイベントでお米に合うおかずや焼きおにぎりなどを手作りし、提供されている。ゆくゆくはお米の生産者として法人化し、活動の幅を広げていきたいそうだ。お米と常陸牛を中心に提供する農園レストランや、自然を感じてもらうことができるグランピング施設の開業を予定している。夜はバーベキューを行い、グランピング施設の前にある畑で採れたフレッシュな野菜にご自身が関わる常陸牛をあわせて、お米と一緒に楽しむ。白井さんが提供する“おいしいお米の体験”が、消費者のお米に対するイメージを変え、消費量を増やす一因につながるかもしれない。

今回の受賞により各所でインタビューが掲載され、すでに大人気の白井さんのお米。口に頬張るとじんわりと溶けるようなその甘味に「お米を食べて初めて感動しました」と感想を残す人もいらっしゃる。現在は消費者さんへの直接販売が多いそうだが、2024年5月11日(土)と 5月12日(日)限定で、米料亭 八代目儀兵衛でも提供させていただく。ご自身のお米を何とあわせて食べるのが一番お好きかと伺うと、「私はやっぱりお肉ですね(笑)」と、あどけない笑顔を見せる。

おいしいお米を食べると、それまで持っていたお米への価値観が変わる。「私のお米がきっかけで、日常の食卓にお米を増やしていただけたら嬉しいです」と消費者さんへのメッセージを残された。これまでは大子町を中心にお米を供給されていたが、今後は県外への出荷も検討されているそうだ。そうなれば今よりももっと、大子町がお米の名産地として知られようになるかもしれない。

お米づくりが天職なのに50代で海外に!?若手生産者の“野望”

「お米づくりは自分にとって天職だと思っています。自分がやりたいことと社会から必要とされていることと一般的に言われていますが、私にとってそれが当てはまるのはお米づくりです」と話す白井さん。ちなみに誕生日も“米”という字と関連のある8月8日だそう。

お米を愛し、お米に愛され、まさにお米とともに生きている若手生産者の白井さんは、国外にも目を向ける。知り合いにJAICAの農業指導員として活動されている方がおり、50代になったら白井さんも、その人のように発展途上国でお米づくりの指導をするという“野望”を抱く。それまでに大子町でのお米づくりは、ご自身と同じように次世代にも継承していきたいと考え、今できることとして、地域の小学校で児童たちに指導なども現在は行っているそうだ。「今世の人生はお米のために生きていると思っています(笑)」と若いながらも強い意志を持ってお米づくりを行う白井さんからは、お米業界の未来への希望が感じられた。

2024年5月11日(土)から 5月12日(日)まで、米料亭 八代目儀兵衛、京都祇園と東京銀座の両店舗にて白井さんの「コシヒカリ」が提供される。お米とともに生きることを決め、大きな“野望”に向かって突き進む、25歳若手生産者のお米をぜひお召し上がりください。

【執筆者プロフィール】

荻野 奈々果
お米ライター/栄養士
三ツ星日本米穀商連合会認定お米マイスター取得

広島女学院大学栄養学科を卒業後、米卸業者に就職。同社で社長秘書・広報・営業とマルチに活躍。上京後、米麹や日本酒などの米加工食品について学ぶ。現在は「お米ライター」として、お米そのものから米加工食品まで、お米の魅力を発信し続けている。ライターの傍ら、お米由来の化粧品・米麹甘酒の広報支援やお米のECサービス、日本酒新ブランドの立ち上げに携わるなど、お米のマーケティング支援においても幅広く活動中。

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