“毎年おいしいお米”を届け続けるための、未来のお米づくりー「第10回お米番付」入賞:宮澤和芳さん 品種:ゆうだい21

“毎年おいしいお米”を届け続けるための、未来のお米づくりー「第10回お米番付」入賞:宮澤和芳さん 品種:ゆうだい21

最終更新日:2024-07-01

八代目儀兵衛の「お米番付 第10回記念大会」。節目となる今年の入賞として選ばれたのは、長野県安曇野市の宮澤和芳さんから出品された「ゆうだい21」でした。今回で「お米番付」4度目の受賞となる宮澤さんが常に掲げる目標は、“毎年おいしいお米”を作ること。この目標に向かってこれからも歩んでいくために、異常気象や生産者さんの高齢化などお米業界を取り巻く昨今の問題に対して、今後どのように対応していきたいと考えておられるのでしょうか。また新規就農者さんが抱くお米づくりに対する疑問の解決策を「お米番付」複数回受賞者でもある宮澤さんに伺ってきました。

安曇野でしか生まれない、宮澤さんの“毎年おいしいお米”

長野県中央部に位置する、安曇野市。標高600m前後にあるため昼夜の温度差が大きく、この差がお米の甘みや粘りを引き出す。またこの地域は、他の地域と比較すると農薬の使用量が少なくても稲が病気にかかりにくいと言われている。おいしいお米を育てる上で最適な条件が揃うこの田んぼを、宮澤さんは家業として5代にわたって受け継ぐ。

健康的でおいしいお米を収穫するため、宮澤さんはこの自然の恵みを最大限に活用する。たとえば夏になると毎日、田んぼに水の掛け流しを行う。こうすることで稲の温度が上昇しすぎないように調整することができる。これができるのは北アルプスの清らかな雪どけ水が潤沢にある安曇野市だからこそ。手間のかかる作業だが、これを行うことで冷めてもおいしい人気のお米が出来上がる。塩おにぎりにすると絶品で、「宮澤さんのお米に変えてからご飯が美味しい!」という声も多い。

そんな宮澤さんの目標は、安定して“毎年おいしいお米”を届け続けること。お客さんからの期待に毎年応えるために、稲の成長をデータ化して栽培方法の分析を独自に行っている。分析するためのツールとして、衛星撮影など先進的な技術の導入にも積極的だ。

自然と対話し、先進技術で異常気象に対応

そんな“毎年おいしいお米”に取り組む宮澤さんでも、昨夏の異例の暑さには苦戦されたそうだ。「8月の気温が高くて、特に大切な穂が出る時期に炎天下の日が続いていましたね」と振り返る。この対策として、稲の温度が上昇しすぎないように夜に水を入れ替える作業を、例年以上に徹底して行ったそうだ。しかし、毎晩遅い時間に田んぼに足を運んで水を入れ替えるのは体力的に大変。この対策として宮澤さんは、遠隔のスマホ操作で自動的に出し入れができるシステムを取り入れるなど、気象変化に対して素早い対応を行った。

今年「ゆうだい21」が受賞できた理由として、収穫時期を品種の特性を活かした時期に寄せることができたからだと宮澤さんは分析する。「暑さに負けずにおいしいお米を作るためには、自然との対話が重要だと思っています。稲の成長を見守りながら、必要な対策を講じることで、“毎年おいしいお米”を届けるようこれからも頑張っていきたいです」とのこと。稲の健康状態をリアルタイムで把握するために、ドローンによる生育診断も昨年から導入したそうだ。

受賞4度目の宮澤さんが大切にする、生産者同士の交流の場

自然との対話を大切にしながら稲の成長をデータ化、そして独自に分析を行う宮澤さんは、生産者さん同士の交流も自身のお米づくりを見直す場として大切にされている。「2006年に就農した当時は交流が苦手でしたが、今では質問し合ったりできるようになりました。おいしいお米を作る農家さんが集まる八代目儀兵衛の『お米番付』の表彰式では毎年、多くの生産者さんから刺激をいただいているので、この交流をこれからも大切にしていきたいです」と話してくださった。

これまではベテラン生産者さんが集うことが多かった「お米番付」の表彰式。今回はそこに就農5年以内で良食味のお米づくりを追究する「U-5部門」受賞者も加わった。表彰式後のトークセッションでは、この「U-5部門」で受賞した新規就農者3名が、お米づくりを行っていて感じる疑問を歴代受賞者に投げかけた。トークセッションを傍聴されていた宮澤さんにも、彼らの質問を聞いて感じたことを改めて教えていただいた。

新規就農者の質問か、「お米番付」歴代受賞者が考えたこと

トークセッションで最初の質問として挙がったのは、おいしいお米を育てる方法について。これに対し宮澤さんは、「就農時、まずは基本の育て方を他の生産者さんから学び、真似してみましょう。でもずっと真似し続けるんじゃ良くない。田んぼの特徴は地域によって様々なため、他の生産者さんと同じ栽培方法をしても、全く同じ味のお米は実らないことが多いんです。だから基礎を一通り学んだ後は、地域の特性を生かした自分なりの作り方を早く見つけることも大切だと思います」と教えてくださった。宮澤さんも就農した当初は、先代からお米づくりの基礎を一通り学んでいたが、その後はご自身のやり方を追究させてもらっていたそうだ。就農後約4年後には先代の手を離れ、お米の品種、栽培方法、どの田んぼにどのお米を植えるかなど、全体の管理は宮澤さんの裁量で決定するようになった。

また2つ目の質問として、高齢化した生産者さんの引退が相次ぐ近年、若手生産者さんの耕す面積が増えてきている問題が浮上した。耕す面積が増えても“こなす”お米づくりにならないように、宮澤さんは収量と品質を確保することをいつも心がけておられるそうだ。「毎年自身の目標を立てて栽培方法を工夫し、少しずつでも自分の求める味に近づけていくことがおすすめです。そうすると、ただ作業をこなすだけではなく自分のモチベーションの維持もできて、結果的に経営の安定にもつながると思うんです」と語る。

最後の質問は、栽培についてだけでなく販売方法。この内容に対して、これまで“毎年おいしいお米”を作ることに特化してきた宮澤さんは「私も販売が下手くそなんですよね…(笑)」と苦笑する。「現在は地元の方の口コミに頼っていますが、新しい販売方法を模索していきたいと思いました。これまで消費者さんとの交流を通じて得たフィードバックを基に、今後はインターネットでの販売にも力を入れていきたいです」と話す。歴代受賞者である宮澤さんだが、就農5年以内で良食味のお米づくりを追究する「U-5部門」受賞者3名が抱く質問をきっかけに、ご自身のお米づくりについて振り返ったり、今後の販売方法を見直すきっかけにもつながったそうだ。

未来のお米づくりのために。宮澤さんが考える生産者の働き方

現在、就農18年目となる宮澤さん。ご自身のお米づくりの今後の在り方について、日本の人口減少や生産者の後継者不足、お米の消費量減少など、昨今のお米業界の課題から真剣に考える。お米の需要と供給の問題については「日本だけでなく海外の食糧バランスも定期的に把握して、将来的に食品輸入できなくなった時の日本ためにどんなお米を作っていくかなど、これから考えていかなくてはならないことが山積みです」と話す。

生産者の後継者不足については、すでに取り組みを開始しているそうだ。元保育士の従業員さんと協力し合って、子供たちに農業の魅力を伝える活動に力を入れている。たとえば、保育園の子供たちに大きなトラクターやドローンを見せることで、「農業ってかっこいい!」「お米づくりをしたい!」と関心を持ってもらう。野球選手やサッカー選手、YouTuberなどに並んで、いつの日か、なりたい職業ランキングの上位にお米の生産者も仲間入りするほど、魅力を感じてもらえるようにできたら。農業のマイナスイメージを変えていく取り組みを始められている。

また自然相手の生産者さんもプライベートの時間を持つことができるように、社内の働き方の改善を行っている。従業員さんの中には子どもやご家族を持たれている方も多い。ご自身を含めた従業員全員が、子育てにも注力できるような働き方を宮澤さんは目指す。そのために休日を週に2日、また盆正月にもとることができるようにしているそうだ。また今年の夏に活用した、遠隔で自動的に田んぼの水の出し入れができるようなシステムのように、先進的な技術は今後も積極的に取り入れていきたいと考えておられる。この生産者の働き方の見直しは、宮澤さんのこれからも“毎年おいしいお米”を届けていくための新たな一手。ここから切り開かれていく、宮澤さんの未来のお米づくりに向けた挑戦に目が離せない。

2024年7月6日(土)から 7月7日(日)まで、米料亭 八代目儀兵衛、京都祇園と東京銀座の両店舗にて宮澤和芳さんの「ゆうだい21」が提供されます。「お米番付」にて今回で4度も受賞し、昨年「番付受賞米シリーズ」にも選ばれた宮澤さんのお米は、毎年期待を裏切らないおいしさ。「食べていただければ違いが分かるはずです。ぜひ口にしていただき、ご感想を伺いたいです」と話してくださいました。宮澤さんのお米に感動した方はぜひ、SNSなどでご感想を教えていただけますと幸いです。

【執筆者プロフィール】

荻野 奈々果
お米ライター/栄養士
三ツ星日本米穀商連合会認定お米マイスター取得

広島女学院大学栄養学科を卒業後、米卸業者に就職。同社で社長秘書・広報・営業とマルチに活躍。上京後、米麹や日本酒などの米加工食品について学ぶ。現在は「お米ライター」として、お米そのものから米加工食品まで、お米の魅力を発信し続けている。ライターの傍ら、お米由来の化粧品・米麹甘酒の広報支援やお米のECサービス、日本酒新ブランドの立ち上げに携わるなど、お米のマーケティング支援においても幅広く活動中。

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