『母との別れに、後悔は残したくなかった』-プロと実体験から考えるお葬式 vol.1 準備編

『母との別れに、後悔は残したくなかった』-プロと実体験から考えるお葬式 vol.1 準備編

最終更新日 2022-04-03
公開日 2021-07-21

はじめに

八代目儀兵衛当主・橋本隆志と申します。京都にて、江戸時代から続く米屋の八代目として商いをしています。一緒に働いてくれる社員はもちろん、家族みんなで支え合って、ここまでやってこられました。代々家業を継いできたこともあって、私たち家族は強い絆で結ばれていると感じています。

残念なことに、2021年4月、母が永眠しました。ガンでした。写真は、私の結婚式の時のものです。太陽のような笑顔で、私たちを支えてきてくれた母。考えていたよりも早く訪れた別れに、私たち家族は深い悲しみに包まれました。母のためにしてあげたかったこと、叶えられなかったこと、様々な思いが頭をよぎる一方で、やらなくてはいけないこともたくさんありました。お葬式の準備もその一つです。喪主側(喪主:父)の立場でお葬式を行うのは初めてのことで勝手が分からず、これからのことを考えると気持ちが弱りそうになりました。けれど実際には色々な人に支えられ、みんなで良いお葬式にすることができたと思います。

家族を失い、ただでさえ辛いときに、初めてのことに対応するのはとても大変です。前もってある程度の知識があったら、多少は心理的負担が減ったのかもしれないと思いました。

何を考えたのか、何を知りたかったのか、どんなことに戸惑ったのか。私が実際に経験したことを綴ることが、これから同じ困難に直面する人の助けになるかもしれない。そう考えて、今回の連載企画を立ち上げました。

この連載は、実際に母の葬儀を担当してくださった公益社の岡田さんをお招きし、専門家の立場からアドバイスもいただいたうえで構成されています。ですので、安心してご覧ください。

実体験とプロからのアドバイスで疑問を解消しておくことで、遺族の皆様に、ゆっくりと故人と向き合えるお葬式を執り行っていただければと考えています。

少しでもお役に立てば幸いです。

八代目儀兵衛当主 橋本隆志

橋本隆志

八代目儀兵衛当主。ガンを患った母を、2021年4月に亡くした。姉と弟がいる長男で、家業の当主でもあったことから、喪主の父を支えながらお葬式を執り行った。大人になってから初めてのお葬式で戸惑うことも多かったが、岡田さんのフォローで満足いくお葬式を上げることができた。

株式会社公益社 岡田裕章さん

橋本家の葬儀全般をサポート。細やかなフォローと気遣いで遺族を支える。この記事では、実体験にプロの立場からアドバイスをいただく。

家族会議の2日後に

橋本:岡田さんには本当にお世話になりました。感謝の言葉以外出てきません。今回は、私自身の体験を振り返りながら、アドバイスをいただけたらと思っています。

岡田:よろしくお願いいたします。お辛い時期を乗り越えて笑顔の橋本さんとお会いできて嬉しいです。

橋本:ありがとうございます。今こうしていられるのも、悔いのないお葬式ができたからですよ。母が亡くなったときは本当にショックでしたから、岡田さんに担当してもらって本当にありがたかったです。

岡田:お身内を亡くされた方は、本当にお辛いですよね。

橋本:元々、母はガンを患って入院していたんです。亡くなったのは4月13日。母がホスピスを望んでることを医師から伝えられて、家族会議で色々と話し合ったのが4月11日。ホスピスって言われた時点で、そこまで長くないことは分かったんですけど、まさかその2日後に亡くなるなんて、思いもしませんでした……

岡田:急なことだったんですね……

橋本:私はその日、東京で仕事があって、急いで帰って病室に駆け込みました。私が着いてから1分後に、母は亡くなったんです。きっと、私を待っていてくれたんだと思います。

岡田:お母様は、最期まで家族を大切になさってたんですね。

橋本:ええ。最期の1分で、母には絶対に日本一の米屋になると約束しました。仕事で成果を出すと誰よりも喜んでくれていた母ですから、親孝行のためにも、ますます仕事に励もうと思っています。

岡田:すてきなお約束です。

葬儀社は、悲しみに暮れる遺族の支えになる存在

橋本:正直なところ、医師の話ぶりからは、まだ時間があると思っていました。なんとか最期の約束はできたけれど、こんなに急に亡くしてしまって、悲しさと悔しさで頭がいっぱいで。ただ、そんな中でも、お通夜とお葬式の準備はしないといけないと思ったんです。

岡田:それで私たちにご連絡いただいたんですよね。

橋本:心の準備はできていなかったんですが、4月11日の家族会議で葬儀社は決めてたんです。何かあったら公益社さんにって。打ち合わせもできていないタイミングだったので、勝手が分からないし不安だらけだったんですけど、それでも先に葬儀社を決めておいたことは大きかったと思います。

決めてなかったら、まずどこに連絡したらいいのかを考えなくちゃならなかった。正直、そんな余裕なんかなかったと思いますね。冷静な状態のとき、最初に連絡するところを決めておくことって、すごく大切だと今は思います。

岡田:あらかじめ決めていただいていたことで、スムーズにお母様をお迎えにあがれましたね。

橋本:連絡した30分後に来てくれましたからね。そのあとは岡田さんたちがすべきことを教えてくださったので、ひとまずホッとすることができました。

まず母の遺体を病院から移してもらったんですが、そのときに本当にプロってすごいんだなと思いましたね。遺体に手を合わせて、敬意を払って母と接してくださって……。ありがたいなぁって、何度も何度も思いました。丁寧に母の支度を整えてくださったことが、本当にうれしかったです。

私たちにも、落ち着いた言葉で語りかけてくれて。ちょっとした世間話ができる相手がいることは、本当に支えになりました。こんなに突然亡くなるなんて思ってなかったので、みんな混乱してましたから。

岡田:お辛いときですからね。少しでもお力になれば、と……。

橋本:少しどころじゃなかったですよ。私は、祖父を亡くした時にはまだ学生で、母のお葬式が初めて自分が主体となって動くお葬式だったんです。母を亡くしてただでさえショックなのに、これから何をする必要があるのかなんて考えようもなくて。ようやっと、公益社さんに電話したっていう感じで……。

ただ、岡田さんたちが来てくれてからは、細やかなサポートをいただいて、あれもこれもと頼ることができました。だから、いい葬儀社さんと出会うってことが、お葬式の準備の中で一番大事なことかもしれませんね。

岡田:私たちに限らず、どの葬儀社も、ご遺族の皆様の支えになりたいと思っています。ただ、あらかじめ決めておくとよりスムーズかもしれませんね。

橋本:うちの場合は、やはり地元で長年信頼を得ているところが安心だと思って、公益社さんに決めました。細やかにサポートしてくださって、選んでよかったと思っています。

岡田:信頼できるところをちゃんと探せるのも、事前に決めておくメリットですね。

橋本:私たちはとりあえず葬儀社は決めてあったんですけど、他にも、色々用意しておいたほうがいいことってあったんでしょうか。

岡田:そうですね。事前にご相談に来られた方に、私がおすすめしていることはいくつかあります。

プロからのアドバイス

いざというとき、混乱した状態で葬儀社を選ぶことはご負担が大きいです。あらかじめ葬儀社を決めておくことで、少し楽になったという方も多いようですよ。最近は、ご家族による生前のご相談が増えています

また、以下のようなことも、あらかじめご親族で確認しておくといいと思います。

●いざという時の、ご住職への連絡方法(仏式の場合)
●来られるご親族をリストアップし、ある程度人数を把握する
●故人様にお召しいただくのは洋服なのか、着物なのか
●遺影に使う写真はどれか
●一緒に棺に納めたいもの

母が喜ぶお葬式に

橋本:岡田さんの支えがあって、少し落ち着いた頭で、これから母のためにできることを考えました。できることは全部やってあげたい、と。一番に考えたのは「お葬式は、母が喜ぶものにしたい」ということです。明るく社交的な人で、顔も広かったので、当初は社葬にしようと思っていたのですが……

岡田:当時はコロナ禍であり、会場にお招きできる人数も限られていたので、難しいのではないかとこちらから申し出たのです。

橋本:お葬式自体初めてだし、当然コロナ禍でのお葬式の在り方なんて分からないわけですから、岡田さんには色々と相談に乗ってもらいました。

岡田:現実に色々と制約は出てくるんですが、一番大切なのは、悔いの残らないお葬式にすることだと思います。できる限りお気持ちに寄り添ったお葬式の形をご提案しました。

橋本:私たちが目指したのは、母が喜ぶお葬式。母が喜んでくれることって何かなって考えたとき、静かにというよりは、大勢の人とお会いして、盛大に見送られることなのかなと思いました。だから、大規模にできる社葬を第一候補としていたんです。

けれど、最終的に選んだのは家族葬。家族葬と聞くと、こじんまりした、あたたかくも小さなお葬式をイメージしていたので、母のためのお葬式とはちょっと違うかなーと思っていたんですよね。

でも実際には、母に似合う豪奢なお花を祭壇いっぱいに飾って、感染対策を徹底しながらも200名の方にお会いしてお別れすることができたんです。今では心から、ああいう形でお葬式ができて良かったなと思っています。

岡田:家族葬と社葬は、家族が主体か、会社が主体かという違いしかありません。お葬式の内容そのものに制限はありません。家族葬だから遠慮しなきゃならないということはないんですよ。
橋本:だからこちらも遠慮なく、やりたいことを伝えました。そうしたら、あまりにすてきな祭壇にしてもらえたので、フェイスブックでも写真を投稿させてもらいました。

祭壇には、母の好きだった花をふんだんに使いました。色とりどりで、華やかで……。ご参列くださった方も、「家族葬って聞いてたけど、本当に立派なお葬式で驚きました」と言ってくれました。誰もが母らしさを感じ、母のことを偲んでくれるお葬式になったと思います。

何よりこの祭壇を見て、喪主である父が涙を流して喜んでいました。「本当に立派にしてもらって…」って言いながら。誰よりも長い年月を母と過ごしてきた父があんな風に喜んだんです。母にも絶対に喜んでもらえたはずだと自信を持って言えます。

岡田:遺影のお写真でも、お母様があたたかく微笑んでいらっしゃいますね。

橋本:そうなんです。母が生前に冗談で「この写真を遺影にして」って言ったのを、姉が覚えててくれてたんですよ。母の希望を叶えられて、姉にも感謝しています。

岡田:皆様がお母様を思う気持ちで、すてきな祭壇ができたんですね。

橋本:岡田さんは、本当に私たちの心に寄り添ってくれました。「お母様はどんな方でしたか」「この花の似合う、笑顔のすてきな方だったんですね」と、母のことを一緒に偲んでくれて……。思い出話も、たくさんたくさん聞いてくれました。

岡田:お母様の人柄や、どれだけ多くの愛をくださったか・どれだけ多くの方に愛されたかがとてもよく伝わってきました。だから、お母様に喜んでいただけるお葬式にできたんだと思います。

橋本:母のためのお葬式には社葬がふさわしいと思っていましたが、そんなことはなかったですね。満足のいくものになりました。

岡田:形式よりも大切なのは、気持ちをどう表すかですから。悔いは一つも残してほしくないんです。

プロからのアドバイス
お葬式で大切なのは、形式よりも、悔いを残さないことです。どんなご要望でも、お聞かせくだされば、それに沿った提案をいたします。遺族の皆様、故人様のご意向にできる限りお応えします。

具体的に何がしたいかは思い浮かばなくても、お人柄をお聞きする中で、イメージが固まっていくこともあります。たくさんお気持ちを聞かせてください。

家に帰りたいという、母の願いも

橋本:母を亡くして悔しく思うことの一つに、「家に帰りたい」という母の願いを叶えてあげられないままだったということがありました。

岡田:突然のことでしたからね。

橋本:それがとても心に引っ掛かっていて……。本当はもっと、してあげられたことがあったんじゃないかって。こんなに早く亡くなると知っていれば、母の願いも叶えてあげられたんだろうけど……

岡田さんは母が亡くなってからずっと支えになってくれて、色々な話も聞いてくれたので、そういう話もポロッとしたんです。亡くなった後だけれど、母の身体だけでも家に帰してあげたいって。

岡田:それで葬儀の後、お母様には一旦ご自宅に帰っていただくことになりました。

橋本:こんな要望まで聞いてもらえて、本当にうれしかったです。悔しい思いが、少し癒えました。遅くはなったけど、母の望みをかなえられたかなって。

これはたぶんイレギュラーなお願いだったと思うんですけど、どこでも対応してくれるものなんですか?

岡田:どこでも対応しているかはちょっと分かりかねますが……。私どもでは、できるだけ遺族の方の心を軽くできるよう、最大限のことをしたいと思っています。

ご遺体の搬送というのはなかなか、自分たちでは難しいことです。この場合、プロである私たちなら、ご要望にお応えできると判断しました。

橋本:そんなことまで対応してくれるなんて思いもしなかったので、驚きましたし、本当に感謝しっぱなしでした。

岡田:お母様も、きっとお喜びになったでしょうね。

マナーや常識を大切にしつつも、悔いのない選択を

橋本:母を家に帰したいとお願いした時もそうですけど、岡田さんは常に私たちの気持ちに寄り添ってくださって、精神的に本当に助けられました。

岡田:そう言っていただけると光栄です。

橋本:やっぱり一緒に悲しんでくれるだけじゃ、あんなにいいお葬式にはならなかったんですよね。私たちのサポートをしながら、しっかりと式を運営してくれたんです。

お葬式の流れやマナーをしっかり把握している人なんて、珍しいですよね。私自身、何も分からなかったわけですし、そういう人も多いと思います。いざという時なんて、冷静に物事を考えられませんしね。

岡田:仰る通り、葬儀に通じていると自信を持って言える方は少ないと思います。葬儀社の人間は勉強もしているし、経験も積んでいるので、段取りはお任せください。

橋本:段取りももちろん、お葬式をする側になると、心配って尽きないんですよね。誰かに失礼があったらどうしようか、何か忘れてるんじゃないか、なんて……。でも、岡田さんは何かあったらすぐに報告してくれるし、やるべきことも教えてくれるので、安心感がありました。ああ、任せておけば大丈夫だなって。

岡田:故人とのお別れをする、大切な時間がお葬式です。何か少しでも不安があるなら、ぜひお伝えください。余計な不安や心配は取り除いて、まっすぐに、故人様と向き合っていただければと思います。

橋本:何かを選んだりする場面も多かったんですけど、四角四面のアドバイスだけじゃなかったのも嬉しかったですね。通例であればこちらを選ぶのですが、橋本家の皆様の場合、それはちょっと違うかもしれませんね……と、私たちにとってのベストを探ってくださったことに、本当に感謝しています。

岡田:納得のいく答えにたどり着くことが一番ですから。

橋本:お葬式に対して漠然と抱いていた「こうしなきゃいけない」「こうあるべき」みたいなものは、実はそんなに気にする必要がなかったのかもしれないと思いました。

岡田:マナーや方法は、それが唯一絶対の正解ではないんですよね。お別れの形は、いくつあってもいいと思います。

プロからのアドバイス
葬儀社の人間は、もちろんマナーに精通しています。不安なことはなんでもご相談ください。ただ、お葬式は、故人様のお見送りをするもの。プロとしてマナーなどは指南しますが、絶対に守らなくてはならないことは少ないです。あまり囚われすぎず、お気持ちに沿った選択をおすすめします。

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