『京都では、棺に写真を納めない』-プロと実体験から考えるお葬式 vol.7 京都のお葬式事情編

『京都では、棺に写真を納めない』-プロと実体験から考えるお葬式 vol.7 京都のお葬式事情編

最終更新日:2023-05-17

八代目儀兵衛当主・橋本隆志が母を亡くしたのは、2021年4月のことでした。初めて喪主側で運営するお葬式(喪主は父)では、たくさんの疑問や戸惑いに出会いました。この連載では、橋本の実体験を振り返り、プロからのアドバイスと共にお葬式のリアルをお伝えします。今回は、京都のお葬式の特徴についてがテーマです。

橋本隆志

八代目儀兵衛当主。ガンを患った母を、2021年4月に亡くした。姉と弟がいる長男で、家業の当主でもあったことから、喪主の父を支えながらお葬式を執り行った。大人になってから初めてのお葬式で戸惑うことも多かったが、岡田さんのフォローで満足いくお葬式を上げることができた。

株式会社公益社 岡田裕章さん

橋本家の葬儀全般をサポート。細やかなフォローと気遣いで遺族を支える。この記事では、実体験にプロの立場からアドバイスをいただく。

黄白の結び切りは特に京都で使われる

橋本:私たちは代々京都で商いをしてきました。法事専門ギフトシリーズ「偲」を開発するにあたり、改めて弔事のマナーを勉強したんですが、やはり地域柄って出るものですね。

岡田:そうですね。今は大分薄まってきているとは思いますが、地域によっては私たちも知らないような伝統が受け継がれていることもあります。また、東日本・西日本や関東・関西で違うこともありますね。

橋本:西日本の代表的なところで言うと、香典返しの掛け紙に使う黄白の結び切りが該当すると思います。

岡田:黄白の結び切りについては関西・西日本全域で用いられますが、特に京都においては、黒白を選ばれる方がほとんどいないと言っていいくらい、黄白が根づいていますね。

橋本:逆に京都以外だと、黒白もある程度使われるんですね。

岡田:そうですね。京都ほど黄白一色ではないように思います。

橋本:あと、関東の人は「満中陰(まんちゅういん)」「満中陰志(まんちゅういんし)」って言葉はあまり使わないですね。場合によっては、全く聞いたことがないという方もいるようです。

岡田:満中陰は仏教用語で四十九日の忌明けを指す言葉、満中陰志は四十九日の忌明けの際に贈る香典返しを指す言葉です。東日本の方は忌明け、香典返しと、そのまま言うことが多いのではないでしょうか。

ただし、香典返しをすべて満中陰志と呼ぶわけではありません。満中陰志はあくまで四十九日の忌明けの際に贈る香典返しを指す言葉であり、その他の機会に贈る香典返しは含みません。

橋本:満中陰という言葉を知らない方にとっては、ややこしいかもしれませんね。

岡田:昔は地域内で完結することも多かったですが、今は全く違う地域の方へ香典返しを贈る方も増えています。関西の人にとっては当たり前のことが、関東の人にとっては難しいことも多いし、逆もまた同様です。

橋本:ギフトのために勉強していなければ、私も関東のことはよく分からなかったかもしれません。

岡田:地域によっても、宗教によっても、またご家庭によっても違いが出るのが弔事です。分からないこと、知らないことはあって当たり前なので、ぜひ葬儀社やギフト業者の方に頼っていただきたいですね。

香典辞退が多いのは京都の特色

岡田:橋本家の皆様も当初辞退を考えられていたように、京都では特に香典を辞退される方が多い印象ですね。

橋本:それも地域柄なんですね! 何か理由があるんですかね?

岡田:明確に理由は分かりませんが、地域性が出るということは何か受け継がれてきたものがあるんでしょうね。京都は歴史の古い街ですし、人付き合いや礼儀に対する文化がずっと守られているのかもしれません。

橋本:ということは、逆に「受け取るのが普通」っていう地域もあるんでしょうか?

岡田:はい。地域によっては、ほとんどの方が受け取るというところも結構ありますよ。それもまた、地域の結束を強める意味で受け継がれてきたことなのかもしれませんね。

ただ、やはり今は「この地域ではこうでなきゃならない」という考えは薄れてきました。そういう意味でもお香典を受け取るかどうかは、地域の皆様に足並みをそろえるのではなく、ご自身のお気持ちで判断していただくのがいいと思います。

直葬が少なく、葬儀を行うことがほとんど

橋本:もしかして葬儀の形式も、京都には何か特徴的なことはありますか?

岡田:うーん……そうですね。直葬が少ないことは地域柄と言えるかもしれません。

橋本:直葬というと、通夜もお葬式も行わず、ご遺体をそのまま火葬場までお連れするんですよね?

岡田:はい。最近では直葬を選ぶ方も増えていると聞いています。ですが、京都では本当に少ないです。寺院が多く、仏教の根付いた街だからかもしれませんね。

橋本:確かに、お寺さんがすごく身近な街です。

岡田:関東での直葬の話を聞くと、件数にかなり差を感じますね。

橋本:こう話をしていると、地域差って結構ありそうですね。棺に写真を納めてはいけないという話なんかも、地域によっては違うかもしれません。

岡田:写真については、ご存命の方の写るものはいけないとか、写真は一切いけないとかで違いがあるかもしれません。一部地域では喪主は白い服を身に着けるなど、他の地域の方には馴染みのない風習が残っていることもあります。

けれど、根っこをはすべて同じ。故人様のご縁で人々がつながり、旅立ちを見送る場がお葬式です。地域の伝統や決まりを考慮には入れつつも、後悔を残さない形は何かという視点で判断していただきたいと思います。

【編集後記】

何かと分からないことが多いお葬式。実体験を通したあと、プロとのお話の中で見えてきたのは「気持ちを受け取る・伝えること」の大切さでした。一般的にはこうだから……と、凝り固まって考えず、故人にしてあげたいことは何なのか・感謝の気持ちをどう伝えるかとシンプルに捉え直すことが、悔いを残さないことにつながります。この連載でまとめた一通りのマナーや常識は指針であり、全てその通りである必要はありません。気持ちを通い合わせる葬儀のヒントになれば幸いです。

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