【番付受賞米シリーズ】“美しさ”を第一テーマに掲げ、当たり前のことを丁寧に

【番付受賞米シリーズ】“美しさ”を第一テーマに掲げ、当たり前のことを丁寧に

最終更新日:2023-11-11

お米番付」の歴代受賞者の中でも、食べた瞬間に感動するほど「粒の生きた」上質なお米をつくる 8 名の生産者を厳選した「番付受賞米シリーズ」。今回そのうちのひとつとして選ばれた奥村知己さんのハツシモは、今年で第10回大会となる「お米番付」第3回大会と第6回大会にて受賞歴がある。“美しさ”を第一テーマに掲げ、お米づくりを田んぼの環境づくりから行う。当たり前のことを丁寧に行うことで自然と共存する奥村さんの、多様性を大切にする次世代のお米づくりに迫ります。

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日々ゴミ拾いをする農家さん

奥村さんの田んぼがあるのは岐阜市内中心部まで車で15分ほどの柳津町。街と自然の間にあるこちらの田んぼを、馬に犂を牽かせて耕していた時代から代々受け継ぎ、奥村さんで5代目となる。田んぼに使用する水は日本を代表する一級河川の木曽川を水源とし、土は灰色低地土と呼ばれる水はけの良い環境に恵まれる。

田んぼが市街地にある奥村さんの頭を悩ませるのは、周辺地域のゴミのポイ捨て。田んぼを巡回すると、ペットボトルやビニール、また最近はマスクなどが落ちているそうだ。見つける度に悲しい気持ちになるが「与えられた環境でやっていくしかない」と前向きさを忘れない。ご自身の田んぼをキレイにすることから始めようと考え、自ら率先して日々ゴミ拾いを続ける。「田んぼだけじゃなく、お出かけをしてもゴミを拾うようになって、キリがないです(笑)。結果的にお米づくりを通して、恥ずかしながら自分の行いが良くなりました」と笑いながら話す。

このような背景もあり、奥村さんはお米づくりをする上で“美しさ”を第一テーマに掲げてお米づくりを行っている。稲は栽培環境があまり良くなくても最終的には実を結ぶほど生命力がある。しかし、美しい環境で育ったお米が人々を心から感動させると考え、田んぼを常に綺麗にするよう心がけている。例えば初詣などで神社にいくと、その神聖な空気感に心が引き締まる感覚を経験した方も多いはず。奥村さんはご自身の田んぼにもそんな空気感を作りたいと考えている。「目に見えるゴミだけではなく、そこに流れる空気感まで気持ちのいい田んぼづくりが目標。柳津町にいる私にしかできない味があると思うんです。現実としっかり向き合い続けることでオンリーワンのお米を育てたいと思っています」と話してくださった。奥村さんのように“美しさ”を第一テーマに掲げてお米づくりを行っている農家さんはなかなかいない。就農されてからこれまでの経緯を伺っていると今の考えに至った経緯が見えてきた。

人の感動を生むのは“美しさ”

奥村さんが就農したのは2009年、ご実家のお手伝いから始まった。当時は、飼育コストがかかる合鴨農法の弱点を解消するアイガモロボットが誕生したばかりだった。アイガモロボットとは、排気ガスを出さない巨大クローラーが雑草を踏みつぶし、光合成を阻害する仕組みで、合鴨と同じような役割を果たしてくれる。これを実験利用することで、無農薬栽培に目を向けるようになった。この時期に農薬に頼らない栽培を追及したお陰で、現在は農地の約半分もの面積の稲を無農薬で栽培している。

そして第3回大会で八代目儀兵衛のお米番付で初受賞した年から、おいしさをとことん追求するお米づくりをするようになった。当時“日本一おいしいお米”を作りたいと思った奥村さんは、毎年お米番付にエントリーし続けた。「一発屋で終わらないために、“日本一おいしいお米”を目標にし、試行錯誤していました」と振り返る。一方で、人間にとっておいしく感じるお米になるよう田んぼに手を加える度にジレンマを抱えていたそうだ。例えば、本来稲が生きていく上で必要無いほどの量の肥料を与えるのは人間のエゴだ。人間が好むおいしさにするためだけに土壌に住む微生物の多様性が損なわれ、本来の自然の姿ではなくなってしまう。たくさんの種類の微生物が住む自然だから、美しい地球が生まれるのだ。

「人間の都合で、どこにでもあるおいしさに仕上げられたお米というのは、既に農業が進化した現代において、ある程度出来上がっていると思うんです。でも人が心から感動するのはそこじゃない。そのお米のおいしさの奥にある背景の“美しさ”だと思うんです」と話す奥村さん。そこで自然と人間がバランスをとって共存できるといった、人間が支配しない生物の多様性を保った田んぼこそが人の感動を生み出すという答えに辿り着いた。

当たり前と、丁寧に向き合う。伝える。

このように自然と向き合ってお米づくりをされてきた奥村さんが、これまで具体的な栽培方法を勉強したのは他の農家さんとの交流の場だった。農家さんが集まる勉強会や懇親会に遊びに行くような感覚で参加し、話を聞くことで知見を増やしていった。栽培方法のデータを細かく取って分析をするよりも、この経験がご自身にとって一番の栽培方法の勉強になったそうだ。「結局大切なのは、難しいことを考えて机に向かって勉強することじゃないと思うんです。地元の小学生さんたちに農家として談話しに行くことがありますが、頭でっかちにならず、一つ一つのことと向き合うことが大切だと伝えています」と話す奥村さん。人や自然と向き合い、その場を楽しむ。小学生の時に習った当たり前のことが、お米づくりに限らずどんな状況下においても大切なことなのかもしれない。

自然相手のお米づくりは、当たり前のことを見失いがちだ。迷った時に奥村さんはやはり“美しさ”を判断基準にし、稲だけではなく様々な場所に気を配る。例えば、田んぼの水を澱んでいる箇所の無い常に綺麗な状態にするために、入水箇所を増やしているそうだ。また雑草が生えてきたら、稲が育ちやすいようにある程度は取り除くこともあるが、その時は雑草に対しても「ごめんね」と語りかけながら行う。マニュアル通りではなく愛情を込めながら行うと、不思議と雑草の伸び方も優しくなってくれるのだそう。

このように“美しさ”を判断基準にすると、これまで適当に済ませていた一つ一つの行動の本意が当たり前のこととして見えてくる。「丁寧に行っていれば、不思議と自然は応えてくれるんです。自分の行動で環境が綺麗になっていくのは自分自身も気持ちがいいですしね」と話す。お米や田んぼの“美しさ”だけではなく、それを作り出す奥村さんご自身の心の“美しさ”が感じられた。

おいしさにも多様性を求めて

私利私欲のために作ったものはいいものが生まれない、と考える奥村さん。そのため、ご自身が収穫したお米を食べて感動してくれる人の反応が一番の報酬なのだそう。奥村さんが育てるハツシモは岐阜県の奨励品種。初霜が降りる頃に実ることから名付けられ、粒が大きく、歯ごたえのある食感が特徴だ。万人受けする主役のようなコシヒカリとは違い、ハツシモはさっぱりとしてどんなおかずも引き立ててくれる名脇役のような存在。郷土が育んだハツシモの味わいには、根強いファンがいる。「万人受けするおいしさのお米だけじゃ面白くないでしょう?農業も多様性の時代だと思うんです。おいしいと思ってくださった方に、年に一度でも食べてもらえたえら本望です」と決して主役になろうとしない謙虚さを感じた。人が心から感動するお米というのはもしかすると、自然のあるがままを受け入れ、当たり前のことを丁寧に行った積み重ねによって育まれる“美しさ”から生まれるのかもしれない。

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【執筆者プロフィール】

荻野 奈々果
お米ライター/栄養士
三ツ星日本米穀商連合会認定お米マイスター取得

広島女学院大学栄養学科を卒業後、米卸業者に就職。同社で社長秘書・広報・営業とマルチに活躍。上京後、米麹や日本酒などの米加工食品について学ぶ。現在は「お米ライター」として、お米そのものから米加工食品まで、お米の魅力を発信し続けている。ライターの傍ら、お米由来の化粧品・米麹甘酒の広報支援やお米のECサービス、日本酒新ブランドの立ち上げに携わるなど、お米のマーケティング支援においても幅広く活動中。

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